不動産学の魅力 明海大学 不動産学部 第19回 不動産学博士課程の講義 法制度や事例の議論で理解深く
住宅新報 2024年9月24日 号 7面
博士課程でも、学部と比べるとかなり少ないが講義がある。ただ、講義の位置付けは異なる。博士論文をまとめるための支援という意味合いが強いという特徴がある。教授と学生が一つのテーマについてお互いに調べてきたことを発表し、議論をして知識の体系化や新しいものの見方を身につけていく。テーマに沿って制度や事例の調査と考察を行い、その中で出た課題や疑問点を次回の講義までに調べ、議論する。
マンション建替えをテーマにした講義では、日本初の分譲マンション「宮益坂ビルディング」の建替え事業について発表。建替え工事直前の当時の写真を織り交ぜ、マンション建替え円滑化法による組合施行であること、建替え前と建て替え後の建物概要の比較などを説明した。この事業の意義として、区分所有者の高齢化、複雑化した物件の建替え事例である点や合意形成の難しさの克服、論点として経済の担保を容積率緩和に依存している点や、容積が確保できない既存不適格では建替えができない点を挙げた。こうした発表と意見交換を受けて、等価交換、マンション建替え円滑化法による権利変換、敷地売却のメリットとデメリット、特に権利変換と敷地売却の違いについて次回までに自分なりにまとめていった。
これらの制度の比較とメリットとデメリットを発表した上で、教授からは区分所有法の取り扱いからマンション建替え円滑化法に至るまで時系列を踏まえて解説。要約すると、区分所有法では修繕と比べて建替えに費用が掛かるときに建替えができるという「費用の過分性要件」があり、区分所有者間でトラブルが多発したことから02年に法改正が行われた。等価交換は資力がない区分所有者に事業者が代わって建替え費用を負担するが、区分所有者の地位が不安定になるという問題から、マンション建替え円滑化法による権利変換や敷地売却という制度が整備された。敷地売却については、埼玉の物件の事例を具体的な価格計算を示して紹介した。
博士課程の講義は、直接の研究テーマでなくても深く学べる点に魅力がある。博士の学びで最も重要なのは、自ら課題を設定し、新たな価値を見出すという点であり、これは今の社会人が最も求められている力である。リスキリング(学び直し)の選択肢として、不動産学の博士課程がもっと活用されてよいと考えている。
【教員コメント】 高経年マンションは年々増加するが、建替え事業は進んでいない。国は区分所有法を改正し、建替え決議の合意要件を緩和する方針だ。しかし、開発業者が事業参画できる条件を備えているマンションは限られている。法改正が実現した場合、どこまで建替えが進むのか注視したい。(小杉学)

























