不動産学の魅力 明海大学 不動産学部 第7回 不動産と「FIRE」族 カギを握る〝社会的信用〟
住宅新報 2024年6月25日 号 7面
近年よく耳にする言葉として、「FIRE」族という言葉がある。「FIRE」とは〝Financial Independence,Retire Early〟の略で、日本語にすると「経済的な自立と早期の退職(リタイア)」の意味となる。若いうちに所得の一部を貯金に回して一定水準の資産を作り、その後はその運用益だけで、悠々自適に生きるという夢のような言葉だ。
「FIRE」という言葉が生まれたアメリカは日本より高所得者が多いので、「FIRE」族はある程度現実味のある話だ。しかし、日本はアメリカほど若い高所得者は多くない。日本では「FIRE」族と言えば、不動産との関連性が強くイメージされている。地下鉄の広告ステッカーでよく見かける関連広告も、不動産などを経営することで、経済的自由を確保し毎日の通勤電車に苦しまず、自由時間を楽しむ内容が主流になっている。
なぜ日本では不動産が「FIRE」族と結ばれるのだろうか。
大学で学んだことによれば、世界様々な国のイールドギャップ(Yield gap/金融機関からの借入の金利と投資物件の利回りの差) の中で、日本は断トツにトップ水準だ。ゼロ金利政策と代表される日本の長期間の低金利、バブル崩壊後の長期間の不動産市場の低迷、それに比べて相対的に堅調な不動産賃料水準などがその理由だと思われる。
ここでもう一つの疑問が湧く。無裁定理論(ノー・フリーランチ理論)によれば、皆が賢い世界・効率的な市場においては、「うまい話を自分だけが見つけるわけではない」ということだ。うまい市場は、すぐ競争が激しくなり、そのうま味はすぐなくなるはずだ。近年の大都市部の不動産価格高騰で、以前よりイールドギャップの幅が縮小したが、不動産を活用した「FIRE」族の実現はまだ有効と考えられる。
では、なぜ無裁定理論が利かないのだろうか。その背景には、人口減少などによる将来の不動産市場に対する不安も一因だと思われるが、私は「社会的信用」が重要なキーワードではないかと思う。不動産は高額な商品なので、財布のお金だけで気軽に買える人は限られる。金融機関からの融資が欠かせない。その時、真っ先に問われるのがその人の「社会的信用」だ。不動産市場への参加は、「社会的信用」というハードルによってフィルタリングされる。結局、日本での「FIRE」族の実現は「社会的信用づくり」から始めなければならないことにたどり着く。
【教員コメント】 社会経済状況が厳しい中、新たなライフスタイルとして若者の間で関心が高い「FIRE」族を取り上げ、不動産の魅力を婉曲にアピールした点、不動産教育の土台である「社会的信用」を最後の結びとして強調にした点について高く評価したい。(表明榮)

























