不動産学の魅力 明海大学 不動産学部 第3回 米国の不動産事情 宅建士を中立な専門家へ
住宅新報 2024年5月28日 号 7面
大学の海外研修でハワイを訪問し、アメリカの不動産事情について学ぶ機会を得た。その際、アメリカでは売主・買主双方に専門家であるエージェントが入り、契約をする仕組みになっていると聞いた。それぞれのエージェントが依頼主にとって最良の結果になるよう取り組むようになっている。このことを知り日本の宅地建物取引士の立ち位置について疑問を持った。
日本の宅建士も土地建物の取引において、その専門性、公平性を持って売主・買主のどちらにもよらない第三者として契約に関わることが望まれている。
しかし、宅地建物取引業法には、宅地建物取引業者(以下、宅建業者)は、各営業所の従業員のうち5人に1人の割合で専任の宅建士を置かなければならないという規定がある。また、重要事項説明は、宅建業者の被雇用者である宅建士が説明を行うことになっている。そのため、会社(宅建業者)の都合によっては、契約成立に影響する情報を故意に伝えないということや不実の内容を伝えることを強いられることも起こり得るのではないだろうか。宅建業者からしてみれば契約が成立してしまえば良いからだ。
賃貸借の場合には、短期間で借主から解約されれば、借主は新たな部屋を探す必要があり、その分新たな契約を結ぶ必要が生まれ、更に手数料などで利益を上げることができる。ここでも、被雇用者である宅建士は、会社に有利になるような行動を求められるのではないか。宅建士が専門家である以前に被雇用者という立場であることから、果たして本当に中立の立場に立てているのだろうかと疑問を感じた。
このことから私は宅建士も、弁護士や建築士と同様に士業として独立して事務所を構えることを提案する。この提案では、宅建士を買主(借主)側の専門家として置き、宅建業者は売主(貸主)側の専門家として位置付けることで、双方それぞれに専門家がいる状態になる。情報の非対称性もなくすことができる。
現在、大手企業では多いと営業担当者の9割が宅建士であるという。それほどの人数が宅建士であり、今後、重要事項説明書等がIT化により、安易に作成可能になれば今より更に顧客のニーズを引き出す能力が必要になり、会社員としてではなく、物件情報を提供し顧客と一緒になって最適なものを見つける専門家としてのニーズが増えてくると私は考える。
【教員コメント】宅建士は公正かつ誠実に事務を行うことが求められる(宅建業法第15条)。しかし、宅建業者の従業員である以上、制約を受けるのでは、という指摘である。もっともアメリカでもエージェントはブロカーに属している。学生が感じた中立性確保の違いは、両手仲介が認められるか否かの違いなのかもしれない。中村喜久夫

























