事故物件 取引価格・家賃とも10%下落 建物内への波及効果には差 売買で悪影響 およそ5年続く
住宅新報 2024年3月19日 号 6面
心理的な瑕疵を伴う事故物件は、当該物件のみならず周辺エリアへの資産価値の毀損につながりかねない出来事だが、不動産取引で事故物件であることを告げずに、後から知った消費者から損害賠償を起こされるケースも珍しくない。「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」によれば、賃貸では死亡発覚から3年経過すれば原則として告げなくてもよいとされ、自然死と事故死は告知しなくてもよく、取引する部屋以外の部屋で発見した死も告知する義務はない。
とはいえ、取引相手の意思決定に影響を与える場合は告げる必要があることも忘れてはならない。
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警察庁の統計によれば、2023年の自殺者の総数は昨年末時点の暫定値として2万1818人となり、前年比でほぼ横ばいで推移し、およそ7割が男性で占めている。
日本少額短期保険協会孤独死対策委員会によれば、死亡時の年齢は男女とも80歳を超えており、22年11月の調査でも男性のほうが孤独死の割合が多く83.2%に達する。孤独死を発見するまでに要する時間は3日以内が約4割で最多だが、3カ月以上も発見されないケースもあり、事故物件を無くすことが難しい現状を突き付けている。
こうした中で、「瑕疵プロパティ買取ドットコム」を運営する合同会社sity(東京都世田谷区、泉俊佑代表)は、今年2月に「事故物件に住むことについての意識調査」を公表した。全国の20歳~69歳以上の男女計532人を対象に事故物件の定義・理解、住むことへの抵抗感、事故物件を選ぶ際の重視点などを質問したところ、事故物件に対する考え方については、過去から現在まで「変わらない」(86.5%)と回答するとともに、家賃割引があっても「事故物件に住むことを検討しない」(53.9%)が半数超を占めており、過去に事故物件に住んだことがあるとの回答は4.9%にとどまった。同調査では、事故物件での関心事では、亡くなった入居者の事故の経緯や死因を知りたいとのコメントが挙がっているほか、衛生状態や清潔さ、リフォームの状態などの関心が高い。
一方で、事故物件でも原状回復がきちっとなされたうえで、賃料も安ければ入居する人もいる。「31%以上の割引で検討する」(24.6%)、「21~30%の割引で検討する」(12.0%)など事故物件も住む対象から排除してないない割合が46%を占めている。同社では、「意外と事故物件を気にしていない人が多い」とし、家賃の割引など経済的なインセンティブが十分であれば選ばれる可能性があるとした。事故物件であることよりも経済的な利点が優先される消費者が一定数いるとする。
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日本住宅総合センター、成城大学、一橋大学が共同で事故物件に関する研究を行っている。心理的瑕疵をもたらす死亡事故が建物内の取引物件に及ぼす影響や、そのメカニズムを明らかにすることを目的に、日本最大級の心理的瑕疵物件情報を持つ大島てる物件公示サイトのデータと、東日本レインズの賃貸と売買双方の取引データを使い研究を進めた。
その分析の結果、事故物件(死亡事故が発生した物件)の売買価格と賃貸家賃は共に10%程度低下したが、建物内の波及効果(同じ建物内の事故物件以外の住戸の取引への影響)においては、売買と賃貸で影響が異なっていることが分かったという。賃貸住宅への影響は小さい一方で、売買物件は5%程度の価格下落が5年程度継続する。
日本住宅総合センター副主任研究員の菅澤武尊氏と成城大学准教授の定行泰甫氏は、「建物内の波及効果に着目すると、売買の物件において事故後に有意な価格の下落が見られた一方で、賃貸物件において賃料下落効果は確認されなかった」と説明するとともに、売買と賃貸で波及効果の程度に差が生じる点では、「事件が起きていない住戸の取引においては事件について告知されないことが習慣となっているので、事件のことを知らずに入居する借家人が多いのかもしれない」とみている。 また、今後の研究としては、周辺物件が市場滞留期間や事件の告知や公表のあり方に応じた影響を明らかにすることが課題だとする。

























