ADR相談からみる 事業者のためのトラブル事例 ――傾向と対策 【第4回】競売トラブルの傾向と対策
住宅新報 2023年11月28日 号 7面

割安価格で不動産を取得できるということから人気の高まっている競売不動産ですが、この取扱いには専門知識と業務ノウハウが必要です。なぜならば一般の不動産取引とは異なり、買主の保護が十分になされてはいないからです。例えば、取得後の前所有者に対する立ち退き交渉などは、買主がしなくてはなりません。そして、ここにトラブルが発生するケースが多くあります。決められた立ち退き期日を過ぎても前所有者が物件に住み続け、立ち退く気配がないというものです。
この種のトラブルではADRが有効に機能するケースがあります。
まず、トラブルの原因として前所有者の「感情的な問題」がある場合は、話し合いの場を設け、じっくり相手の話を聞きながら交渉を進めることができます。「感情的な問題」とは、前所有者が「こちらの今後の生活のことも一切考えず、退去を迫られても困る。こちらにも言い分がある」と考えている場合に発生します。
もちろん、法律的な正当性は落札をした買主にありますが、交渉の内容が「所有権が移ったので退去してください。期日以降は不法占拠になります」というものだけでは、相手によってはなかなか退去せず、トラブルが長期化してしまうことがあるのです。したがって、調停人という第三者を交えて話合いの場を持ち、そこで競売に関する法律を改めて伝え、共に前所有者の話を聞き、今後の生活へのアドバイスを行いながら退去日を決めることは、トラブルを解決するために有効なのです。
また、「管理費滞納」に関わるものも多いといいます。これは、分譲マンションなどの区分所有建物を落札した際、管理費や修繕積立金などの滞納金が残ってしまっているというものです。不動産競売においては、原則として物件の所有権を継承する人がその滞納管理費などの債務を引き継ぐことになっており、各種滞納金は買主が負担することとなります。物件に関する滞納金などは、競売物件出品の際に公告される「物件明細書」にその情報が記載されてはいますが、ここに記載されている金額は調査時点のものであるため、それ以降増えている場合が多くあるのです。そのため、一般の買主は滞納金のことを考慮せずに入札し、落札後その存在と額に驚くといったことになってしまうのです。
滞納金に関するトラブル相談が寄せられた場合、まずは「全額支払う必要がない場合がある」ことを説明するのが良いでしょう。というのも、未払金に関して時効が成立している場合もあるし、滞納金の支払先である管理会社などとの減額交渉が上手くいく可能性もあるからです。とにかく、滞納金のトラブルがあった際は、綿密な調査と関係者との話し合いが必要でしょう。























