紙上ブログ 不動産屋の独り言723 賃貸現場の喜怒哀楽 坂口有吉 滞納者への家賃回収を考える 家主は声そろえて「忘れたい」
住宅新報 2023年10月10日 号 6面

都内の家賃取り立て業者から電話が入った。「そちら様で、家賃を滞納されて困っているケースはありませんか。もしあれば当社にお任せ頂けないでしょうか」と言う。退去していても5年以内なら引き受けられるとのこと。成功報酬とし、取り立てた分の約40%が手数料で、家主には60%弱が支払われる。もし取り立てできなかった場合は一切の費用請求はしないという。家主にとってのリスクは少ない。実は、私も滞納者に連絡することがあるが、一向にらちが明かないし、一歩間違えば非弁行為になるから、腰が引けている。
厚意をあだで返す
私の一存で決める訳にはいかないので、各家主に連絡をして了解を取り付けなければならない。業者には、数日後に改めて連絡してくれるように伝え、家主に連絡すると、250万円も滞納されて強制執行で退去させた入居者の家主が、「私はもう忘れたい。今も何とかしようとしてくださる坂口さんには感謝していますが、もう忘れましょう」と言う。無理もない。数カ月滞納したところで督促をしたが、同じアパートの住人が「奥さん、すごく病弱な感じで、今度入院したら生きて出られないんじゃないかな」と言う。「今、路頭に迷わせるのはかわいそうだから」と家主が支払いを待ってくれていて、自分から約束した「いつ支払うから」という話も一度も守られたことはない。何度もご厚意をあだで返して、その都度開き直っているから、退去させただけでも安堵しているんだろう。























