長谷工初の女性社内取締役・吉村直子氏インタビュー 「変化示すメッセージ」と認識
住宅新報 2023年8月22日 号 5面

調査研究の俯瞰視点生かす
今回の取締役就任については、「青天の霹靂(へきれき)だった」と話す。入社以来、一貫して調査研究に従事しており、ゼネラリストではなくスペシャリストとしてのキャリアを歩んできたため、「自分に務まるかと不安だった」ことが主な理由だ。
しかし同時に、「当社は全ての人を対象とした住サービスを提供する企業であり、〝人生100年時代〟において、サステナビリティは自分の研究でも重要なキーワード。担当の取締役となったことで、より幅広い形のサステナビリティに関与できる新たなチャレンジでもあり、今はとても楽しみに感じている」と前向きな姿勢を見せる。
専門分野は、高齢者居住や高齢者住宅・施設を主な対象とした住居学。国土交通省や厚生労働省、自治体、業界団体の検討会委員等を歴任し、主に高齢者住宅・施設に関わる政策や制度、民間事業などに知見を提供している。自身の強みについては、「調査研究の経験で培った、物事を俯瞰(ふかん)で見る視点」を挙げた。併せて、「先行きの不透明な時代に、進むべき方向性を俯瞰で捉え、持続可能な経営に向けてどのように現場に落とし込むかをしっかり考えていく」と述べる。
あえて「女性」を明示
他方、個人としての能力・経験だけでなく、女性として初めての社内取締役に就任したことについても「当社として、体制や方針の変化を強く示すメッセージであり、社内外に対して大きなインパクトを与える明確なアクション」と認識。6月に政府が決定した「女性版骨太の方針」にも言及し、「国が数値目標を示したことに加え、この社会変化の大きな時代に(性別や年代、属性などが)均質な組織で対応していけるかという点から考えても、女性役員の拡大は喫緊の課題」と指摘する。
しかし、「不動産・建設業界は残念ながら女性比率が低い傾向にあり、当社もグループ全体では女性社員比率が約30%あるものの、単体では15%程度にとどまる」と現状を説明。「現実として、女性はライフイベントによる仕事への影響が大きいことは確か。しかし人口減少と少子高齢化の進む中、優秀な人材獲得のためには、採用・活用の門戸を狭める意味はない」として、「当社では以前から『個性活躍』の推進を提唱しているが、併せて女性活躍にも一層力を入れて加速化していきたい」と語る。
これらの意思の表明からは、今回の人事が「多様な人材の活躍」という従来の方針の一環というだけでなく、「女性活躍の推進」を強化する施策である点を重く受け止め、あえて〝初の女性社内取締役〟という点を明示していく姿勢がうかがえる。
そうした考えの背景には、今後は役員として、新中期経営計画の策定など経営面にも直接関与していくことへの責任感がある。近年、サステナビリティやダイバーシティについて企業へ求められる情報開示の水準は高まっており、「会社としてのビジョンを明示することが、これまで以上に大事になっており、次中計は(目標数値の新設など)更に踏み込んだ内容になると思っている」と襟を正す。
業界内外との交流網も展望
加えて、自社内だけでなく、建設・不動産業界全体の女性活躍推進にも意欲を示す。「『女性社内取締役といっても、1人就任しただけでは変わらない』との意見はあるかもしれないが、今回の人事で当社内(の雰囲気)が明らかに変わってきている実感がある」として、自身が業界他社による検討や行動の契機となることに期待を寄せる。
更に、経済産業省の「女性リーダー研修」活動を経て他業界の女性役員等との交流も経験しており、「将来的には、業界内外で活躍する女性たちとも、互いに知見や刺激を与え合う幅広いネットワークを構築していきたい」との展望を語った。
■吉村直子(よしむら・なおこ) 92年長谷工コーポレーション入社、総合研究所配属。94年から(株)長谷工総合研究所所属。17年主席研究員、19年取締役兼主席研究員(現任)を経て、23年6月から長谷工コーポレーション取締役兼執行役員。岐阜県出身、奈良女子大学大学院修了、56歳。





















