不動産取引現場での意外な誤解 売買編192 代金の1%の手付金でも解約手付性を有する?
住宅新報 2023年5月16日 号 15面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解

Q.前回、手付金には、解約手付であることを契約書に明記しておかなくても、当然に解約手付性を有するとのことでしたが、手付解除の場合には、その手付金が自動的に相手方への損害賠償の予定額になるということですね。
A そう理解してよいと思います。
広い意味では、手付解除も違約の場合の損害賠償額の予定(違約金)と同様に考えられますが、厳密には解除権の留保特約に基づく損害賠償額の予定と解することができるからです。
Q.手付金は通常売買代金の5~10%程度の額を授受することが多いと思いますが、1%や2%程度の少額の場合も解約手付の性質を有することになるのでしょうか。
A 判例は、1%程度の手付金でも解約手付としての効力を認めていますが(大判大10年6月21日)、それは、その手付の制度が江戸時代からの長い慣習によって法制度化されたものだからです。
Q とはいえ、手付の額を少額にした場合、手付放棄や手付の倍返しが増加し、契約が不安定になるのではないでしょうか。
A そのとおりです。ですから、それを防止するためには、一定の時点で中間金(内金)を支払ってもらうようにするとか、手付解除期限を設けるといった措置を講じる必要があると思います。
Q しかし、買主が中間金(内金)を支払っても、買主自身は手付解除ができますよね。
A できます。手付解除ができないのは「相手方」が契約の履行に着手した場合ですから、ご指摘のように、買主が履行に着手していても、買主自身は手付解除ができます(民法557条(1))。したがって、そのためにも、それに併せて手付解除に期限を設けるというのは、それなりの効果があると思います。
ただし、このような場合に、買主に中間金(内金)の支払いに代わる方法として手付金の補充を求めることは、手付金の分割払いとして、宅建業法上できませんので、注意が必要です(宅地建物取引業法47条3号)。これは宅建業者が売主の場合に限らず、個人間売買の仲介をする場合でも同様です。
渡邊不動産取引法実務研究所
代表 渡邊 秀男























