不動産流通☆迫真 フロントライン (下) 薄氷を踏む神経戦 都市部は実需と投資で土地探し
住宅新報 2022年11月1日 号 6面

「よい土地がなかなか出なくて困っています」
不動産価格に高騰感が募る中でも、住宅メーカーの営業担当者はそのように話す。東京23区内で戸建て住宅を希望する一般消費者は多く、そうした購買層は土地代に建築費を合わせて1億2000万円ほどの予算だという。高所得者層ほど上物にかけるお金は大きく1億円台半ばの一戸建てを求めるのは珍しくない。
別の不動産仲介会社の営業担当者は、「先日、IT企業で働く南アジア系の外国人が中古マンションを8000万円台で購入した」と話す。こうした個人の需要にとどまらず、マンションを建て賃貸経営をしている法人も加わり、個人・法人が入り乱れて土地は争奪戦の様相を呈する。
売り先行の場合は急いで売却をしなくてよいため、高値での売却ができ、その売却資金を購入費に充当できるメリットが大きい。一方、資金に余裕があれば新居をじっくりと探しながらの買い先行で売却活動をする。各社の仲介担当者は顧客の資金力に応じて売買を進めている。
事業法人は判断が速い
だが、面白いことに売買価格が少しでも目線に合わないとその土地・建物取引はピクリとも動かない。1億円で全く反応がなかったのに売り出し価格を9000万円台に下げたとたんに複数の問い合わせと、申し込みが舞い込み、仲介担当者は「不動産購入申込書」をもらい土地・建物の売主の元に駆け付ける。
売り買い双方で薄氷を踏むような神経戦が繰り広げられるが、特に購入決断が速いのは、注文住宅など実需として希望する個人ではなく、賃貸経営を予定する法人だ。特に30坪前後以上の整形地で収益物件を経営することを目的とする法人の場合、築古の建物があっても自社で解体するので更地での引き渡しを求めないケースも少なくない。建物の確定測量図作成費用を売主に求めないで自社で負担するケース、確定測量で隣人から許可が下りないときに売買契約を白紙に戻す「解除条件付契約」にしないケースもある。投資物件を所有したい顧客を多く抱える都内の仲介事業者は、「まとまった整形地が出にくい都区部で迷ったり、渋っていたら別の買主に持っていかれる。公募面積と実測測量で差が生じた場合は売買代金で清算するようにしている」などと話す。
野村不動産ソリューションズの調査によれば、首都圏7~9月期(10月1日時点)の住宅地価格の平均変動率は全エリアが9期連続プラスで推移している。年間ベースで見ると、値上がり地点の割合は引き続き70%程度を維持しており、値下がり地点は依然としてゼロのまま。同社の直近8月発表の「住宅購入に関する意識調査」は不動産の価格が「上がる」という回答が最も多く35.7%(前回比4.3ポイント上昇)となっている。
売買市場に潮目の変化
ただ、不動産市場には潮目の変化もみられる。東日本不動産流通機構のデータを見ると、首都圏7~9月期の中古マンションと中古戸建て成約数は5期連続で減少だった。
前号の来年古希を迎えるシニア男性は自宅の売却先が決まり、契約を交わす日も設定していたが10日前になって売却先の事業法人の融資審査が通らなかったと連絡が入った。賃貸マンション開発の建設工事を発注する予定だった建設会社が倒産したことで銀行が融資を否決したためだ。売却は振り出しに戻った。
帝国データバンクによれば、22年度上半期(4~9月)の全国の企業倒産件数は3123件(前年同期6.3%増)と3年ぶりに増加し、その中でも建設業は2割も増加した。ロシアとウクライナが干戈(かんか)を交える中で、円安も進んでいることで建設資材の値段が上がり、中小零細の建設業者で倒産が増加している。景気の減速感が強まると、不動産取引の風景が一変する可能性もある。(中野淳)























