知って得する建物の豆知識 343 ヴァナキュラー(Vernacular)建築 暗黙知である地域技術に驚嘆
住宅新報 2022年9月13日 号 10面
連載: 知って得する建物の豆知識
筆者が若かりし、1965年ごろ、東京藝大の山本学治教授(建築構造・1923~1977)の対面講義を受けたことがあります。教授はヘビースモーカーで「パール」という銘柄のタバコを指先が焦げそうになるまで吸い、灰皿には短いどんぐりのような吸い殻が山積みになっていました。教授のお話で特に印象深かったのは「風景はシステムです」という言葉でした。その地域の気象、造山活動、地形、植生、動物や昆虫等、それらが微妙なバランスを維持することで「風景」が現出しているという意味です。何か一つの構成要素が少しでも変化すれば「風景は一変してしまう」とも述べられました。
その後、バーナード・ルドフスキーが著した「建築家なしの建築(Architecture without Architects)」によって「ヴァナキュラー(Vernacular)」という概念を知りました。ヴァナキュラーとは「土着の」あるいは「風土的」という意味で、ルドフスキー自身は「長年繰り返された選択の蓄積として生まれた建築に必要なルールや知恵の多くは口伝や暗黙知として継承される。その知恵の体系は地域技術として普及し、それぞれの地域に同じような形態の建物が建てられ、風土色のある集落を形成している」と述べています。
また、F・Lライトは「実際のニーズに応え、地域の感性とフィットする術しかない人々による、環境に適応した大衆建築で、そのデザインは知的な思考が欠如したプリミティブなものである。しかし、欧州の高度に美的でアカデミックなものよりも、大いに学ぶ価値がある」と述べ、建築における「暗黙知」を肯定しています。

























