街の不動産トラブルを解決する 14 調停人候補者紹介 【調停人候補者】 峯 昌裕氏 有限会社吉祥寺不動産 部長 (東京都武蔵野市)
住宅新報 2022年9月6日 号 9面
連載: 街の不動産トラブルを解決する
はじめに、私が今まで関わったトラブルの一例を紹介します。原状回復トラブルでは、経年変化を考慮せず、貸主が一方的に費用を請求したケースがありました。原状回復=「募集前の状態に戻す事」と認識している貸主もいるのです。当社では入居者募集前に必ず「経年変化」を考慮する事を説明し、貸主の了解を得てから募集をしています。また、借主がスケルトン返還にも関わらず、造作を残置・地下ピットに埋めたケースや契約書に禁止(業務委託を含む)と記載しているにも関わらず、無断転貸を行ったケースもありました。賃料滞納についてはコロナ禍以降、特に顕著になっており、当社ではなるべく初期段階で分割してでも支払えるよう、貸主借主双方と協議しています。
私が調停人候補者となった背景としましては、コロナ禍以降、賃料減額・滞納・解約・原状回復が急増し、貸主・借主双方からの相談が多くなったということがあります。確かにコロナはメディアがこぞって取上げたように、飲食店舗(借主)が大きなダメージ・苦境に立たされたことは事実です。一方、貸主(特に個人・中小企業)にとっても大きなダメージでした。一部のチェーン店からは弁護士名で一方的に解約・賃料減額の内容証明が届いたケースも聞いています。協議しようにも相手が弁護士ですから、泣き寝入りするケースもあったと思います。ADRはそのような事にならないように、双方の立場を尊重しながら解決を図る手法ということで、この重要な役割を担いたいと思い、資格を取得いたしました。
そもそも、トラブルを未然に防ぐためには、日頃からの貸主・借主・管理会社のコミュニケーションが重要と考えています。しかし、どうしてもトラブルになる事もあります。お互いが(あるいは一方が)弁護士を雇い、相手の意見も聴かずに自分の意見のみ主張しては、解決の糸口は見つかりません。また「その場限りの合意」は必ず禍根を残します。ADRには裁判官も弁護士もいません。調停人を交え、お互いが互いの意見(感情も含めて)をよく聴き、一致点を見出していくため、有効であると思います。
名刺に「ADR調停人候補者」の肩書を記載してから、お客様から業務内容の質問を頂く事があります。内容を説明すると、「貸主・借主双方の意見を公平・公正に聴いてくれる不動産屋さん」と認識されているようです。信用力が増したと感じていますし、今後より一層、研鑽を積まなければと考えています。


























