日影阻害、電波障害など近隣対策 対応を誤れば企業評価に響く マンション・ビル開発事業者の悩み
住宅新報 2022年7月12日 号 3面

近隣との折り合いが重要だ
分譲マンションだけでなく賃貸マンションの開発も含めて各社が着工前、着工中に頭を悩ます一つが周辺住民への対策だ。マンションが建つことによる日照阻害や電波障害、騒音・振動、ビル風害、彩光、眺望、プライバシーなどに対応しなければならない。
東京都江東区にある分譲マンションの管理組合は、はす向かいに不動産大手が賃貸マンションを開発することになったことで日照とプライバシーの問題に敏感に反応した。住人の一人は、「私どものマンションは南向きの間取りで、はす向かいの賃貸は内廊下で南側と北側に住戸があり、その北側の住民のベランダから我々の住戸がどう見えるのか気になった。もちろん、建築確認申請が下りているのでマンション開発が止まらないことは分かっていたが、日が低くなる冬の時期にどの程度まで日陰になるかのシミュレーションを要請したり、いろいろと申し入れをした。入居が始まる前にはマンションの内見も申し入れて、そのマンションから自分たちの住居がどのように見えるのかを確認した」と話す。
ただ、見学に参加した1人は、「最も日が短い12月は午後2時頃から日陰になると説明を受けたが、実際は12時半には日陰になっている」といい、開発事業者の誠意のなさを垣間見たと対応に不満を隠さない。これら近隣対策を開発事業者に代わって請け負う専門業者もあり、近隣対応の事例を自社ホームページで紹介しているのを見ると、「日照阻害によって土地の価格が低下した分を補償してほしい」などの事例も挙がっている。
事前に日影になることが分かっている場合、その補償額を算出する。近隣対策の専門家などによると、日影が建築基準法の規制値内であっても日照を阻害すること場合があり、日影規制の適用を受けないエリアでも日影が生じることが珍しくないという。補償額は、新たに日影となる時間に1時間当たり基礎額を乗じて調整金を加えて算出。1時間当たりの基礎額は、開発事業者(建築主)と日影被害を受ける当事者らとの折衝によって決まるのが一般的だ。
こうした問題は絶えることがないが、ビルなどの商業用不動産の開発では近隣対策が広範囲に及ぶ。日影や彩光にとどまらず電波障害が問題となるケースがある。ここでは建物が建っていることで電波が遮へいされたり、電波が建物の壁面に反射してテレビ画面にゴーストが発生して画質を悪くするなどだ。電波遮へいに伴う障害は予測しやすいが、反射障害は予測が難しいとされる。建物の外壁の素材や地形、周辺の建物の影響など様々な要素が関係するためだ。大規模になるほど、高層になるほど電波障害の範囲が広がっていく。
職住近接が進んだことで、東京などの大都市部での新たな開発事業は、既存住民への配慮をどこまでできているかが不動産会社の評価に直結している。(中野淳)





















