不動産市場異聞 大東建託賃貸未来研究所・AIDXラボ所長 麗澤大学経済学部客員教授 宗 健 第63回 住宅ローンのすすめ
住宅新報 2022年3月8日 号 7面
連載: 不動産市場異聞

住まいは賃貸がよいのか持ち家がよいのかという神学論争に終わりは見えないが、今回は住宅ローンについて考えてみたい。多額のお金を借りるということに対して抵抗感があったり、大きなリスクだと感じる人もいるとは思うが、多面的な見方をすれば必ずしもリスクばかりではないことに気付く。
お金を借りられることも才能の一つ
そもそも金融機関が住宅ローンのような多額のお金を貸す、ということはその人の性格や能力に基づいた職業や所得、生活様式を評価してのことであり、お金が借りられるという信用力は、語学が得意、プレゼンが得意といったことと同じ個人の才能・能力の一つだと言える。
一方で、失業や病気をしたら返せなくなるといった不安を持つ人もいるが、失業も病気もすべての人に同じ確率で偶発的に発生するのではない。そもそもリスクとはその大きさと発生する確率の組み合わせで把握されるべきものであって、住宅ローンを借りられた、ということは確率的にリスクが相対的に小さい、と金融機関が保証してくれた、ということなのだ。
持ち家とは自分自身を顧客とした賃貸事業
一般的な賃貸事業には、空室、滞納、原状回復、仲介手数料といったコストや、固定資産税等の租税公課が必要で、家賃も下落していくリスクがある。しかし、持ち家ではこうしたコストがなく、税制上も優遇されている。
建築コストには、賃貸でも持ち家でも販売会社等の利益が上乗せされており大きな差はなく、持ち家とはいわば自分自身を顧客とした確実性の高い賃貸事業と言えるのである。その事業に対して、金融機関が住宅ローンを貸し出すことによってコミットしてくれている、というわけだ。しかもその金利は減税を含めればほぼゼロ金利であり、借り入れ期間も長く、通常の賃貸事業に比べれば格段に条件が良い。
そして、お金を借りるという取引には、借りるお金の総額、借り入れ金利、借り入れ期間、担保や保証人といった条件があり、期限の利益という重要な概念もある。
借りられるだけ
できるだけ長く
住宅ローンは、個人の年収の数倍もの金額を変動金利であれば1%以下で30年以上の長期で借り入れでき、しかも担保は購入した物件でよく通常は保証人もいらない。更に団信と言われる生命保険が付帯していることがほとんどで、契約者が死亡すれば住宅ローンの支払いは免除され残された家族が住み続けることができる。しかも、通常の金銭消費貸借契約と違い数度の滞納くらいでは期限の利益を喪失せず、すぐに一括返済を求められる、ということもない。
このため住宅ローンは、手元に現金があったとしても借りられるだけ、できるだけ長く借りるのが得策ということになる。手元に現金が残っていれば、失業や病気の際にも当面の支払いや生活費に充当することができる。
繰り上げ返済では
返済期間を短縮しない
住宅ローンの繰り上げ返済では、支払い金利を考え返済期間を短くすることもあるようだが、返済期間を短縮してはいけない。返済期間を一度短縮してしまえば、何かあっても返済期間を延ばすことはできないし、返済期間を短縮しなければ、当然毎月の返済額は減少し、家計負担は減り、繰り上げ返済の速度を上げることができる。そして、どんどん繰り上げ返済を進めていけば、支払い金利も圧縮されていく。
ただし、減税も含めてゼロまたはマイナス金利の状態で繰り上げ返済をするかどうかは議論のあるところだろう。
いずれにしても借りられるのであれば住宅ローンはオススメなのだ。
そうたけし‥87年九州工業大学卒、リクルート入社。リクルートフォレントインシュア社長、リクルート住まい研究所長を経て現職。筑波大学博士(社会工学)・ITストラテジスト























