明海大学不動産学部 不動産の不思議 学生たちの視点と発見 第414回 角地の控えめな建物 重厚感と異国情緒を演出
住宅新報 2021年12月21日 号 4面
【学生の目】
すっかり寒くなり、イルミネーションが街を彩る季節となった。12月はクリスマス、大晦日などのイベントが続き、非日常的な光景を目にする季節である。そんなある日、「ヨーロッパ」を思わせる建物に目が引かれた(写真)。
鉄骨造の建物の外壁は平面的で、使用している材料が高級でも、建築細部の納まりが高度なわけでもないにもかかわらず、引かれた理由を考えた。
第1の理由は、外壁の開口部である。1階の開口部が中世ヨーロッパのロマネスク様式調の半円型アーチで、2階が小さな開口部から光を取り入れる工夫を施した隅切り窓(エブランズマン)を思わせるデザインをしている。
ロマネスク建築は10世紀後半にフランスや北イタリア、ドイツで始まり、ヨーロッパ各地に広まった建築手法である。11世紀から12世紀に建てられたヨーロッパの教会や修道院で多く用いられた。代表的な建物にはトリーアの大聖堂(ドイツ)、ピサ大聖堂(イタリア)やサント・ドミンゴ・デ・シロス修道院(スペイン)などがある。
建物は1階のアーチ部分がサント・ドミンゴ・デ・シロス修道院の回廊を連想させる。高度商業地では少しでも収益性を高めるため、道路境界線いっぱいに建物を配置するだけでなく、看板やプランターを道路に設置することもある。ここでは道路境界線側に半屋外空間の通路を設けて、歩道状に開放し交通の安全と街並みのゆとりをもたらしている。
第2の理由は、角地にもかかわらず、控えめなデザインとなっていることだ。角地は利用効率が優れることから、少しでも目立つ建物と看板にすることが一般的である。これに対して交通の安全や街並みのゆとりに貢献する建物デザインがかえって新鮮に映る。角地に立つ控えめな建物が街区全体にゆとりを与え、価値を高めている。
第3の理由は、影が印象的なことである。修道院の回廊を想像させる1階の通路、エブランズマンを連想させる2階の縦長窓は深く、リズミカルな影を創り出していて、軽い印象となりがちな鉄骨造の建物に重厚感と異国情緒を生み出している。
中世ヨーロッパの石造の修道院と手軽さが特徴の鉄骨造の商業建築を比較すると、建築費や重厚感は正反対で、耐久性も比較にならない。しかし、人への配慮や光の利用が建物の印象に大きく影響することは共通している。
【教員のコメント】
角地は街の印象を左右する。三愛ビルや旧ソニービルはその例だが、一層の高度利用のための建替え圧力が働く。米国の住宅地では建物敷地ではなく緑地とすることも多い。交差点と四隅の緑地の広がりを連続させて地域の価値につなげる狙いだ。























