紙上ブログ 悪徳不動産屋の独り言 賃貸現場の喜怒哀楽 第123回 坂口有吉
住宅新報 2011年10月25日 号 5面
常識では考えられないようなお話 還暦で家を買うことになって
私は長い間ずっと、住まいは「賃貸派」であって、自分があと数カ月で還暦、という歳になって家を買うことになるとは夢にも思っていなかったのだが、事情があって家を買うことになった。と言っても借地権だし、接道1.1メートルという接道不良のため再建築不可のリノベーション物件(基礎と柱だけ残してリフォーム)である。建物は1階が22畳のLDKと6畳の和室、2階に6畳の和室と6畳と7畳の洋室、という4LDKで、庭も広くて明るい。我々夫婦はそんなに部屋数は要らない。1階部分だけでも十分である。
2階の部屋
そこで今住んでいるマンションの1階の住人Mさんに声を掛けた。「今度家を買うんだけど、良かったら2階の2部屋あげるから下宿しない?」と。直ぐにMさんに家を見てもらうと一発で気に入って、「あ、ぜひお願いします」とのこと。
それもそのハズ、今のMさんの部屋は6畳のDKと8畳の洋室の1DKだが、元々は駐車場だったスペースを改築して住居にしているので窓がなく、日は全く当たらない。それでも8年前に「どうせ寝るだけですから十分」と借りてくれたのだが、猫も飼っているし最近は「何とかしたい」と思っていたようだ。
契約書も交わさず、礼金敷金更新料もない。LDKと浴室は共用になるがルーフバルコニー4.5畳も専用で、賃料は光熱費も電話料金も込みで6万円。以前は1DKで6.5万円だったから、破格の条件になる。当初は私の連れ子で独身の長男に住まわせようかと考えていたが、うちのが「Mさんのほうが気を遣わなくて済むかな」と言うので断念。だが、私もそれで正解だったと思う。
5歳年下
Mさんと我々は家族以上の付き合いで互いに全面的に信頼し合っている。うちのより5歳年下の男性だから世間の常識では考えられないことだろうが、私が留守しても何の心配も要らない人物で、実は「キャンセルから生まれたご縁」の前編(第115話)に登場した床屋さんの従業員でもある。管理会社は家主さんの利益を守らなければならないものだが、今の家主さんとはここ数年、理不尽なトラブルが生じていて、私も相当に苦しまされて我慢の限界に達して退去せざるを得なくなったし、ま、背信行為にはならないだろう。 (坂口有吉不動産社長)























