紙上ブログ不動産屋の独り言627 賃貸現場の喜怒哀楽 坂口有吉 定休日の夜、入居者からの電話 合鍵の存在を伝えるべきか
住宅新報 2021年11月9日 号 6面
10月に入って早々の定休日、そろそろ寝ようかと思ったところに入居者から電話。そんな時間に掛かってくる電話が「よかったこと」であった例がない。たいていは「上の騒音がひどいからなんとかしてくれ」とか「トイレの水が止まらない」とかである。水が流れっぱなしになるのは困るだろうけれど、ほとんどが「明日でいいでしょ」というものばかり。嫌な予感がしながらも、出ないわけにはいかない。相手は私とは仲が良く、普段は何かと気を使ってくれる中年男性。そうでなければスマホ画面に名前が表示された時点で「気付かなかった」ことにしてしまったと思う。営業時間外で、しかも定休日なのだから。
会社に置き忘れ
観念して電話に出ると、「こんな時間がにすみませんが、現場にアパートの鍵を置いてきてしまって部屋に入れません。そちらに預けてある合鍵を貸してもらえませんか」とのこと。建築現場の足場を組む仕事をしていて、勤務先の会社に忘れてきたならうちの店に来るより近いのだが、現場は遠い。会社も現場もうちの店より近ければ私に依頼せず引き返したとは思う。だが、私は休みの日はよほどのことがない限り店には行かない。そうでないと休んだ気がしないから。それくらいだから店に行くのはつらいのだが、店までは徒歩3分、すぐに着替えて行くことにした。
10年以上前には 入居者と同じタイミングで店に到着し、合鍵と缶コーヒーを渡した。嫌な客ならそんなことはしない。10年以上も前の真冬に、別の入居者から同じように「鍵を会社に忘れたから」と電話が入り、その日は体調が悪く、早めに寝ていたのだが、「坂口さんが来るまでアパートの前で待っていますよ。店の鍵を貸してくれて、合鍵がどこにあるか教えてくれたら自分で探しますから」と言い、何がなんでも鍵を届けろ、という言い方。後日ブログに書いたら、それを読んで「客のことをあんなふうに書くのか」と大激怒。しばらくして退去したから逆にホッとした。店に合鍵があることを知っていると、そういう場合に入居者は「鍵屋を呼ぼう」とは思わないもの。私に頼めばタダなんだし。それらの経験から入居者には店に合鍵があっても伝えないほうがいいと知った。(坂口有吉不動産・社長)























