不動産現場での意外な誤解 賃貸借編151 新規募集で賃料を安くしたら値上げは容易か?
住宅新報 2021年10月5日 号 21面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解
Q 当社は、賃貸管理業者を兼ねているため、オーナーのためにも安定した賃貸経営を目指しています。そのため、物件によっては、入居者の新規募集に際し、賃料を安くして早く満室にし、次の契約更新時に更新料を免除する代わりに賃料を一定額増額する等の方法で調整をしています。
A よい方法ですね。最初にキチンと契約書に明記しておけば、契約更新時にトラブルになることも少ないでしょうし、スムーズな賃料改定ができると思います。
しかし問題は、その賃料の増額をどの程度にすれば値上げが可能かということです。その実質的な賃料増加額が更新料の免除額以下であれば、ほとんど問題なく契約更新ができると思いますが、更に、増額された賃料の額が「近傍同種の建物の借賃」以下であれば、法的にも可能といえるでしょう(借地借家法32条(1))。
Q ということは、賃料の増額条項を定めるときは、借地借家法との関係が問題になることもあるということですね。
A その通りです。したがって、その増額条項が問題になるのはその借地借家法32条の賃料増減請求権の規定を排除した場合と、その増加額が「近傍同種の建物の借賃の額」を超える場合です。なぜならば、その賃料増減請求権の規定は強行規定ですから、その排除条項や増額条項は無効とされるからです。
Q ということは、その借地借家法32条の規定の適用を排除しない限り、賃料の増額条項を定めたとしても、その額が妥当なものであれば、その条項が無効とされることはないということですね。
A はい。ですから、今回のように、当事者の合意で妥当と思われる賃料改定をする場合には、強いて借地借家法32条の規定の適用があることを契約書に盛り込む必要もないわけです。
Q しかし、かつての判例で、サブリース契約を前提とするマスターリース契約の賃料増額条項が無効とされた事例がありました。
A それは、そのマスターリース契約がオーナー(貸主)と事業者(借主)との共同事業の性質を有しているということで、借地借家法32条の適用がないとオーナー側が主張したために、最高裁がその主張を否定したということです(最判平成16年11月8日)。
渡邊不動産取引法実務研究所
代表 渡邊 秀男























