ADRの現場から 不動産会社が知っておくべきトラブル解決ノウハウ 180 競売による立ち退き交渉に関する事例 日本不動産仲裁機構
住宅新報 2021年8月31日 号 10面
連載: ADRの現場から
2020年4月に1回目の緊急事態宣言が出された際は、首都圏などの裁判所において数カ月程度不動産競売の売却は行われませんでしたが、再開されてからは入札数が増えて落札価格が上昇するなど、競売市場には活気がみられるようになりました。競売では市場価格の7割前後の価格で落札できるケースも多く、不動産事業者のみならず、一般の方も競売に参加するケースも少なくありません。今回は、競売に関するトラブル事例を紹介します。
一般の方であるA氏は、ある物件をレインズ実勢売出価格が2500万円前後のところ、入札の結果1800万円で手にすることができました。通常の70%の価格で購入することができたことはとても良いことなのですが、この物件には問題がありました。前所有者が物件に住み続け、立ち退きに応じてくれないのです。競売の場合は、立ち退き交渉も、落札者が自分自身で行わなければなりません。A氏は度々物件に訪問し、立ち退きを依頼しましたが、両者共にどうしても感情的になってしまい、交渉は進みませんでした。
ここで、A氏はADRによる解決を試みます。担当となった調停人がまず前所有者の話をじっくり聞くことから始めたところ、A氏に「出ていけ」と言われ続けたために感情的になってしまっていたこと、引越しをする当てはあるが、資金が心細く、なかなか実行に移せなかったこと、競売という制度に対する理解が不足していることが分かりました。そこで、調停人は競売実務の知識や体験から、法律や前所有者が今後どのように生活再建をしていくのかなどを説明。また、資金に不安を感じている前所有者の立ち退きを促すため、A氏に引越し費用の負担を提案したところ、A氏はこれを承諾し、前所有者も退去を了承しました。
























