明海大学不動産学部 不動産の不思議 学生たちの視点と発見 第397回 散歩コース沿いのマンション 異なる特徴を強調しバランス
住宅新報 2021年8月24日 号 4面
【学生の目】
犬の散歩コースで何げなく通っていた道だが、この原稿を書くようになってからは目に入る建物を「なぜ」と疑問の目で見ることが増え、その答えを探求することが日課になっている。散歩コース沿いに様々な建物を見る中で、特に目に留まったのが階層ごとにベランダの造り方が異なるマンションだ(写真)。
低層階は躯体と一体化したコンクリート、中層階はすりガラス調のパネル、上層階は縦格子のアルミで造られている。同じ造り方をすることが多い中で、「なぜ」の疑問に3つの理由を考えた。
第1に、プライバシーを保つ目隠しという点では、道路や歩道に近接する低層階は通行人の目線が気になることが多く、上層階は気になることが少ない。低層階は外からの目線を遮断できるコンクリート製のベランダがふさわしい。
第2に、採光・通風の点では、すりガラス調のパネルは採光に優れ、アルミの格子は採光と通風に優れる。いずれも部屋が明るく、開放感が高い。方位にもよるが、両者とも北面以外では日照も得られる。
これに対してコンクリートは、まず、日照が得られない。手すり壁の内側に日陰ができ、植物を育てることに不向きで、環境共生型とは言いがたい。次に、採光・通風共に少ない。省エネを実現する要素の採光や通風に欠けることは、持続可能社会の達成に向けて課題が残る。
第3に、費用対効果の点では、全体をコンクリートにすると重厚感に富む半面、工事費が高くなり、アルミにすると安価な半面、安っぽい印象になる。すりガラス調のパネルは共に中庸だ。3種類の造り方を併用して、外観のデザイン性と建築工事費のバランスを実現している。
異なる造り方をすると全体のまとまりが問題となる。ここではコンクリート部分は意識的に凹凸をつけるとともに太い目地で重厚感を強くしている。
逆に、すりガラス調の部分は薄いコンクリートスラブに突き刺すように手すりが立って、軽快感を出している。異なる材料の異なる特徴を更に強調するように使うことで、全体をまとめている。
水平方向の長さもポイントだ。採光・プライバシー・工事費・デザイン性が共存する「現代風で好感度」のすりガラス調のパネルが横長につながり、その下にはコンクリート手すりが空中歩廊のように続いている。横の連続感が散歩道と一体化している点もポイントだ。
【教員のコメント】
日本の集合住宅はベランダの造り方が建物の印象を決定づける。投資用の賃貸マンションを中心に斬新なデザインが増えた。基壇は重厚かつ高級感、中段は親近感、上段は高揚感の組み合わせが基本だが、汚れや劣化が目立たない工夫も特徴だ。























