建築家の好きな自動車の一つにシトロエンがあります。ステイタスを求めるベンツやBMWなどはあまり好まれません。その理由として、現在ではずいぶん薄まってしまいましたが、かつてはユニークなメカニズム満載の車だったからです。
まずはトラクシオンアヴァンです。トラクシオンは「駆動」、アヴァンは「前へ」を意味し、前輪駆動のことです。シトロエンは始めて7CV(1934年)で前輪駆動を実用化したメーカーです。また、シトロエンのアイコンである二重の山形は「デュブルシェブロン」と呼ばれ、シトロエンが発明したヘリカルギアです。ヘリカルギアは平歯車の歯筋を軸に対してV字型にした歯車です。歯山の接触長が長いため平歯車より強度が高く、駆動音が低いというメリットがあります。
ユニークなメカニズムの白眉はシトロエンDSから装備されたハイドロニューマチック(以下ハイドロ)です。これは植物オイルと窒素ガスを球形のスフィアと呼ばれる鋼製ボールに封入して、ダンパーの機能を持たせるメカニズムです。この油圧メカはダンパーとしてだけでなく、ブレーキやステアリング操作などにも使われ、植物オイルの配管(往き管・還り管)は車中に張り巡らされています。エンジンと連動した油圧ポンプによってスフィアは常時与圧され、車に生物的な挙動を可能ならしめているのです。

























