明海大学不動産学部 不動産の不思議 学生たちの視点と発見 第386回 つながりとぬくもりがある空間 転用時の工夫で新たな空間に
住宅新報 2021年6月1日 号 4面
【学生の目】
最先端のファッションの街として知られる原宿に出向いた。5月中旬ながら東京の予想最高気温は26度の夏日で、快晴に誘われるように外出した若者で青山通りは混雑していた。建物の高さを表参道のシンボルであるケヤキ並木の高さに抑えたことで知られる表参道ヒルズを過ぎ、細い路地に入ると低層の住宅と店舗が共存している。表参道のにぎやかさとは対照的に静かな通りに面して写真の店舗がある。若者の間では知られた店で、この店を目当てに表参道に来る若者や通りがかりに偶然気付いて立ち寄る人もいることだろう。人気の秘密はグルメな飲食にあると思われるが、つながりとぬくもりがある空間に目が留まった。
道路幅員が狭いことに加え、建蔽率制限が緩やかで敷地いっぱいに建物を配置することが多いことから、閉鎖的な印象の店舗になりがちなエリアだが、この店舗は屋内空間と屋外空間がつながっていて開放的だ。その理由は、まず、開けっ放しにしている外壁の建具だ。幅の広い玄関ドアとレジ部分の2カ所の折戸を完全に開放しているのだが、いずれも壁面に対して90度開放していて、中に招き入れられる感じがする。次に、控えめながらしっかりと付けられた庇(ひさし)の存在だ。建物の軒裏天井と庇の底部が同じ高さで、空間に連続性がある。思わず庇の下に入りたいと感じる造りだ。半屋外、半屋内のやや暗い軒下の空間が、明るく開放的な屋外と薄暗い屋内をうまくつなげている。
ぬくもりを感じる理由は、まず、店の中に並ぶ観葉植物だ。次に、植物を並べている棚や屋外のイートインコーナーのテーブルや椅子が木製で手作り感にあふれていることだ。表参道の喧騒(けんそう)や緊張から逃れた若者が憩う場所として、もってこいの演出で、表参道からわずかの場所にもかかわらず、東京の空を眺めながらティータイムを楽しめるぜいたくが人気の理由となっている。
元々はどこにでもありそうな住宅用の建物ではあるが、転用する際の工夫によって、まったく異なる空間に生まれ変わらせている。くたびれた感じが少しあることがリラックスにつながり、新築の店舗よりもかえって魅力的など、店舗設計の巧みさを感じる。梅雨に入るこれからの季節、新型コロナウィルス対策だけでなく、雨や暑さ対策も必要だ。どのような空間でどのような店舗運営をしているか、もう一度訪れようと思う。
【教員のコメント】
都市と建築の活性化は借家人の創造力に負うところが大きい。営業借家では利益を増進するしつらえに改変する中で独創的な不動産を生み出す一方、退去時には原状回復ですべての設えと付加価値を逸失させる。持続可能な社会の仕組みとして課題が残る。























