ADRの現場から 不動産会社が知っておくべきトラブル解決ノウハウ 156 日本不動産仲裁機構 賃貸住宅の退去者からの相談事例
住宅新報 2021年3月9日 号 12面
連載: ADRの現場から
日本不動産仲裁機構には、日々、消費者からADRを見据えたトラブル相談が寄せられています。今回は、賃貸物件の退去者からの相談事例を紹介します。
まずは、原状回復費用を負担することに疑問を感じているA氏です。A氏が2年間住んでいたシェアハウスを退去したところ、原状回復費として敷金から3万5000円を差し引かれてしまいました。A氏が原状回復の内容を問い合わせたところ、ベッドを土壁に付けて使用していたので、深さ5ミリ程度のくぼみが2カ所ついてしまっており、その箇所の土がはがれてしまったための補修ということでした。故意や過失でなく、「通常の使用」の範囲内でついてしまった傷等の補修費用は多くの場合、家主側の負担となるため、A氏は納得がいきませんでした。
次に、自分自身に代わって家族に退去の立ち会いをしてもらったことがトラブルの発端となってしまったB氏。B氏の父親が賃貸マンションの退去の立ち会いをした際、不動産会社から委託された業者から「キャスター付き椅子でついた10センチ程のフローリングのはがれが3カ所あり、フローリング6坪分全面張替えとなるため費用が50万円かかる」と言われましたが、父親は了承して印鑑を押しました。
このことを知ったB氏は、その高額さに納得できず、業者に減額の依頼をしましたが、「了承の印鑑をもらっている、再び現地の確認をすることはできない」として受け付けてくれませんでした。自分の家族であり、B氏自身が退去の立ち合いの依頼をしたものの、これに納得ができなかったのです。
最後は、賃貸物件のカビに悩まされていたC氏です。入居から約半年後、カビに悩まされるようになったC氏。管理会社に連絡をして業者に確認をしてもらったところ、「外壁のヒビなどから水漏れの可能性が大きく、内壁に水が染み込んだ結果のカビ」であるとの見解でした。
もちろん、C氏は対処を管理会社に依頼したのですが、オーナーからは「工事は費用がかかり過ぎるため、不可。日頃からカビが生えないように、加湿器は使わずに暖房も控え(外気温との差がないように)、赤ちゃんには厚着をさせて欲しい。ただし、除湿器はオーナー側で購入する」と言われてしまいました。オーナーの対応に不信感を感じたC氏は即退去をしたのですが、オーナーから退去前1月分の家賃を請求されました。さすがにC氏も、これには納得ができませんでした。
以上、退去者からの相談事例を見ていきました。民法改正によって原状回復の定義も明文化されましたが、この解釈の違いや「個人の言い分」の相違によって、トラブルが発生してしまっているのです。
●法務大臣認証ADR機関 日本不動産仲裁機構 電話03(3524)8013
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