紙上ブログ 不動産屋の独り言 587 賃貸現場の喜怒哀楽 坂口有吉 若い女性滞納者 その後・結末 〝逆の立場なら〟と考えて
住宅新報 2021年1月26日 号 6面
当初、「1月末に退去してから滞納分を分割で支払う」「少し安い物件に引っ越して、今の家賃との差額を大家に返金する」と言っていた若い女性経営者Aさん。私は今の家賃でさえ1年以上も払っていないのに、安い店舗に移ったからといって差額を返せるわけがないと指摘。「あなたみたいな人は一銭も払ってこないと思う。支援金を240万円も受け取っているんだから退去までに全額を払ってください。そんなことではどこに行ってどんな商売を始めても成功などしないよ」と叱った。
責めない家主
すると、数日後に電話してきて「敷金を2カ月分預けてあるからその分は引いてもいいですよね。借金しなくてはいけないため、少しでも額が小さくなると助かります」とAさん。実のところ、家主は一銭も支払われないのではないかと諦めていて、私を責めるようなことは一言も言わない。それどころか私に「あんまりきついこと言って追い詰めなくてもいいわよ」とまで言っている。だからこそ、私は許せない。
普通は、給料が入れば、まず家賃分を確保するもの。ひと様に迷惑をかけないようにするはずだが、今の若者は優先順位が違っているし、支払わなければすぐに止められてしまう携帯電話の料金などを優先する。数カ月滞納してもすぐには止められない公共料金やうるさく請求されない家賃などは後回しだ。それも家主がどういう人か見極めているのだから、甘い顔をしていたらいつまでも払ってこない。自分が逆の立場なら、という発想などないのだ。
「待つ」が当然に
途中から連帯保証人である母親が毎月の賃料を払って1年半分の滞納が1年分に縮まったが、それで安心していたら滞納はまた増える。なんせパート従業員の給料を抜いた残りを賃料に充て、Aさんは店に来ないのだから。そんな経営者などいるわけがない。私に言わせれば1から10まで考えが甘い。家賃滞納者に多く見られる考え方だが、「払うと言っているんだから待ってくれてもよさそう」と自分のことしか考えない。
ところが、である。正月休みが明けて家主に連絡すると、なんと「年末に10カ月分が振り込まれました」と言う。だが、疑って悪かった、とは思わない。後の支払いはもうないのだから。 (坂口有吉不動産・社長)























