紙上ブログ 不動産屋の独り言 583 賃貸現場の喜怒哀楽 坂口有吉 転入者の立ち会いに参加 細かすぎる家主に疲労困ぱい
住宅新報 2020年12月22日 号 6面
普段、転入時の立ち会いはしない。契約が完了し、鍵の引き渡しが済んでいれば、管理会社が立ち会う必要はないからだ。
だが、先日、前入居者の退去から新入居者の転入まで日にちがなかったため、その〝立ち会い〟が発生した。新入居者へ鍵を引き渡すため、引っ越し前日の夕方、私が家主から鍵を預かり、翌日、運送業者が到着する前に現地で待ち、遅れて到着する本人に鍵を渡す流れとなった。
それにより、いろいろなトラブルに見舞われることに。同じ建物の1階に住む家主は「引っ越し当日は留守」と聞いていたが、実際は家にいて、トラックが到着すると、表に出てきて運送業者に細かく指示を出し始めた。それが地獄だった。
隣人が助け船も
「そこは私道だけど、隣の敷地だから止めないで」や「水道メーターのふたにタイヤが乗ると割れてしまうので乗らないで」ととにかく細かい。道幅が狭く、水道メーターのふたに乗らなければ車は方向転換や曲がることができない。その様子を見ていた向かいの家の主人が「うちの駐車場に止めなよ」と助け船を出してくれたが、そういう訳にもいかない。
借主本人が到着して荷物をどこに置くか指示し、物干しざおをひさしの下に設置したら、「それは長すぎて隣の家に出っ張るから使わないで」と家主は言う。隣の家との間には私道があり、2階のひさしの物干し竿が出っ張っても通行に支障はない。それに金属製の物干しざおを切るのは容易ではない。
隣は私が親しくしている人なので、「後で私から声を掛けましょうか。構わない、と答えてくれると思いますよ」と提案すると、「そういう問題ではないと思います」と家主は言う。引っ越し作業員もあきれていた。
死角となるように
そのうち引っ越し業者がカーペットを運んできた。広げるとそこにはタバコの不始末と思われる焼け焦げが50カ所程あった。寝タバコでもしていたのか、そんなカーペットを見たら家主は「今からでも入居を断ってください」と言いかねない。死角になるように私が立って、家主に見られないようにするのに必死だった。後で確認したら、今は禁煙しているそうで安堵した。入居者に鍵を渡したら帰るつもりだったが、最後まで付き合った。 (坂口有吉不動産・社長)























