不動産現場での意外な誤解 売買編141 旧民法時代の「家制度」とはどのような制度か
住宅新報 2020年12月15日 号 8面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解
Q 以前の〔売買編〕の最後に、旧民法時代の「家」の制度がどのようなものであったかを知ることは、所有者不明土地における所有者の探索の上でも非常に重要だということが書かれてありました。
A その通りです。当時の「家」の制度を知ることは、その当時の戸主を中心とした相続制度を知ることであり、所有者不明土地の相続人探しに大いに役立つからです。
Q そうすると、その「家」の制度というのは、相続が中心になっているのですか。
A 相続が中心というわけではありませんが、大きな要素になっていることは事実です。中心は「家督相続」制度だと思います。
この家督相続というのは、戸主たる地位の承継(旧民法964条)と前戸主の有する財産の承継(旧民法986条)の2つに分かれますが、その前戸主の有する財産はすべて家督を相続する新戸主が相続することになり、通常は長男がその家督相続人になりました。
次に、戸主たる地位の承継ですが、まず知っておくべきことは、その地位の承継に伴い、新戸主が次のような戸主権を取得するということです。それは、(1)家の氏を称する権利、(2)家族の居所指定権、(3)家族の入籍・去家に対する同意権、(4)家族の婚姻・養子縁組に対する同意権・離籍権・復縁拒絶権・取消権を有し、それと引き換えに、戸主には(5)家族に対する扶養の義務があり、家族はその戸主に服従する義務がありました。まさに、戸主がその一家の大黒柱として命運を握っていたのです。
Q 家督相続以外の相続というのはなかったですか。
A ありました。それは「遺産相続」といわれるもので、旧民法下においても、戸主以外の家族の特有財産(旧民法748条(1))が認められており、その特有財産について相続が発生しました。そして、その相続人が複数の場合は、複数人の共同相続(共有)ということになり、それぞれの相続分に応じて分割されました(旧民法1003条)。つまり、「被相続人が遺産の分割について何らの遺言をなさなかったときは、共同相続人の協議で定める」ということになっており、かつ、その相続分は、「事前に放棄または譲渡できる」と解されていました(穂積重遠著「相続法大意」)。
渡邊不動産取引法実務研究所
代表 渡邊 秀男
























