明海大学不動産学部 不動産の不思議 学生たちの視点と発見 第363回 密集市街地の街づくり 地区計画で風情と安全両立へ
住宅新報 2020年12月15日 号 4面
【学生の目】
JR山手線「日暮里」駅から徒歩で数分の谷中銀座商店街は、木造建築物が多く残って風情があり、個性を競う店舗には活気があって、若者にも楽しいエリアだ。最近はリノベーション事例が多いことでも知られる。
谷中は江戸時代に幕府が寺町として開発し、今も多くのお寺が残っている。お寺を地主とする借地は多いが、谷中も同様である。借地上の建物の傾向として、所有地上の建物と比べて建て替えが少ないことも、古い建物が多い理由の一つだ。
谷中銀座商店街につながる住宅地は、細街路に面して建物が密集している。建築基準法の集団規定適用前の建築で、接道義務や建蔽率制限などに不適合の「既存不適格建築物」も少なくない(写真)。
密集市街地の一番の問題は火災だ。ひとたび火災が発生すると、耐火性に劣る他の木造住宅にすぐに延焼してしまう。高齢者も多く、問題は深刻だ。
次の問題は、緊急車両が入れないことだ。消防車や救急車が通れる道路が確保できていない場所が多く、消火や救助活動に支障がある。
建て替えが解決策だが、課題が重なって容易ではない。まず居住者の観点からは、現実に暮らしている方がいる、高齢者を中心に〝生まれ育った〟街や家に思い入れのある人が少なくない。建て替えで歴史的な景観が失われることへの抵抗感もある。次に権利調整の観点からは、借地や借家が多い。更に行政の観点からは、「再建築不可」の土地がある。
これらの課題に対して、台東区は20(令和2)年10月、地区計画を策定した。壁面の位置を指定して道路幅員を確保する、建物形態や色彩を制限して景観を守る、容積率を緩和して建て替えを容易にする、敷地規模の最低限を決めて細分化を防ぐなどだ。併せて、協調建て替えや共同建て替えを支援している。
地区計画を策定することは容易ではないが、谷中の例は、行政と住民がお互いの意見を尊重して話し合うことで、伝統をふまえた安全で下町情緒あふれる街を創りだす道が開けることを示している。地区計画を契機に街づくりが更に進むことを願う。コロナ禍で対面会議が困難になっている。いろいろな場所で、問題の共有や解決に向けた建設的な意見交換のための会議が中断しているとすれば、感染症の拡大が間接的に安全な都市づくりをおびやかすことにつながる。感染症が早く収束することを願うばかりだ。
【教員のコメント】
密集市街地は災害危険をはらむ。安全のために道路拡幅や建替えが不可避な一方、完全に更新すると〝らしさ〟を失う。安全と風情の両立には、建築再生のセンスと組織運営の力量を兼備する不動産人材によるストック活用事例の連鎖が必要だ。























