明海大学不動産学部 不動産の不思議 学生たちの視点と発見 第360回 住宅の発信力 居住性犠牲にし多くの文字
住宅新報 2020年11月24日 号 4面
【学生の目】
埼玉県蓮田市は県東部に位置し、JR宇都宮線が通っている。電車の所要時間10分弱で県を代表する都市の大宮駅に到着でき、交通の便は悪くない。しかし、人口は6万人ほどで、高校は市内に1校しかない小さな市だ。駅から離れると田畑が多く、田舎の風景が広がる。
のどかな住宅街に、ひときわ目立つ建物が立っている(写真)。向かいには住民が集まる自治会館があり、地区の中心的な場所と思われる。実際、周りの家には普通に人が住み、生活をしている。カメラを持ち写真撮影している人もいたが、通りかかっても停車する車はなかった。近隣住民の間では慣れた光景となっているようだ。
この家を見て最初に考えることは、管理不全の空き家ではないかということだが、どうやら人が住んでいる。真新しいテレビアンテナや空調の屋外機が居住者の存在を強調しているように見える。
その上でこの家の特徴を見ると、まず、しっかりとした家の造りだ。広い敷地に階高の高い建物が建っていて、造形のバランスもよく、堂々としている。全体が廃墟のように見える中、瓦葺の切妻屋根の状態は良く、棟木、庇(ひさし)、破風いずれも狂いがない。軸組の良さがうかがえる。
次に、外壁が欠落していることだ。屋根から類推すると外壁もしっかりと造られていたと思われるが、現況は多くの部分で損壊している。自然災害が理由であれば暫定的にせよ復旧を試みると思われるがその形跡はなく、意識的に損壊させたようだ。現状、居住の快適性は失われている。
更に、外壁や塀に多くの文字が書かれている。物販や飲食の店舗が店をPRする、芸術家が創造力を高めるなどの目的で、外壁に文字を書くことはあるが、心やすらかに過ごすことが何より大切な住宅で見かけることは皆無といってよい。
田舎の住宅街で、損傷が著しい外壁に怨念のような言葉が書かれている光景は異様で、不気味な印象を受ける。正直、怖いと思ってしまう。誰がどのような目的でこのような住まい方をしているのか気になるところである。
見方を変えると、居住の快適性を犠牲にしながら、まるでビルの屋上看板のように住宅を使って情報発信を試みていることに新鮮な驚きを覚える。一方、周囲の方々は普通に生活していることからすると、家人はパッチワークのジーンズをはく若者と同様の感覚なのかもしれない。
【教員のコメント】
一般に色彩に対して規制はなく、漫画家が裁判で争った例では独特な色使いが認められた。改正土地基本法が適正な「利用」「管理」の必要性を規定した背景には、その欠落がもたらす外部不経済が地域の衰退に直結することへの懸念がある。























