不動産現場での意外な誤解 賃貸借編136 店舗の借主が死亡したら契約はどうなるか?
住宅新報 2020年9月29日 号 8面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解
Q 店舗の賃貸借で借主が死亡した場合、契約関係はどうなるのでしょうか。
A 借主が死亡したということは、個人ということですから、その店舗の賃借権は相続の対象になります。したがって、相続人が複数であれば、その複数人の共同相続ということになります。問題は、その店舗の賃借権の財産的価値が高い場合は、相続でもめることが考えられますが、その賃借権が相続の対象になっている以上、相続人間でよく話し合って後継者を決めていただくしかありません。したがって、後継者がいなければ、賃借権を第三者に譲渡するか、放棄するということになると思います。もちろん、賃借権を譲渡するには貸主の承諾が必要になります(民法612条(1))。
Q 共同相続という話が出ましたが、そうなると、賃料の支払義務も共同相続することになりますよね。
A その通りです。したがって、賃料の支払義務は共同相続人全員が負うことになるのですが、ここで注意しなければならないことは、その賃料の支払債務が「不可分債務」(民法430条)とされ、そのために、貸主は共同相続人に対し、それぞれ賃料の全額の支払を請求することができるとされていることです(民法436条<改正前民法432条>、大判大正11年11月24日)。その理由は、借主の地位が相続によって共同相続人全員に帰属することになるため、各相続人はその賃借物件の全部を使用収益することができることになり、賃料はその相続人の不可分の使用に対する対価になるからです。
Q 被相続人の死亡後の賃料の支払義務についてはよく分かりましたが、被相続人の死亡前に賃料の滞納があった場合には、その滞納分の支払義務についてはどうなのでしょうか。
A 賃料の生前の滞納分については、すでに確定している金銭債務ですから、この点については一般の金銭債務と同じということで「分割債務」(民法427条)とされ、相続人が相続分に応じて承継します(最判昭和34年6月19日)。したがって、その分についてはそれぞれの相続分に応じて支払う義務が生じることになりますので、貸主からの督促や契約解除といった意思表示がなされる前に、後継者問題を含めた遺産分割の問題に決着をつける必要があると思います。
渡邊不動産取引法実務研究所
代表 渡邊 秀男
























