ADRの現場から 不動産会社が知っておくべきトラブル解決ノウハウ 134 「まあいいか」から発生したトラブル 日本不動産仲裁機構
住宅新報 2020年9月15日 号 8面
連載: ADRの現場から
不動産会社は、宅地又は建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう、公正かつ誠実に宅地建物取引業法に定める事務を行わなければなりませんが、業務上のよくある落とし穴として「これくらい、大した問題にはならないだろう」という甘い認識が、大きなトラブルを招くこともあります。
初めに紹介する事例は、「滞納管理費及び修繕積立金の説明不備」に起因するものです。買主A氏は、売主業者であるK社から中古のマンションを1600万円で買い受けました。なお、重要事項説明書の「管理に関する事項及び計画修繕積立金に関する事項」には、「滞納金については売主の負担とする」と記載されていましたが、その金額については記載されておらず、説明もありませんでした。A氏が入居しようとしたところ、管理会社から「まだ滞納金の60万円が支払われていない」ということを知らされ、トラブルになりました。
K社が重要事項説明を行った宅地建物取引士B氏に事情を聴いたところ、「滞納があるのは認識していたが、正確な額は調査していなかった。大した額ではないと思い、滞納金については売主の負担とする旨重要事項説明書に記載した」とのことでした。結果的にK社はその否を認め、滞納分をA氏に支払うことになり、和解が成立しました。
次の事例は、「買主にごみ置き場の撤去等を要求された」というものです。買主C氏は、売主業者であるF社から新築マンションの1階部分を購入しようと、費用の一部を支払いました。C氏によると、その後内覧会において初めて購入した物件のすぐ前が近隣の町内会の「ごみ置き場」であることを知ったとのこと。C氏がF社にごみ置き場の撤去を要求したため、F社はごみ置き場の移設は可能である回答。A氏はそれを信じて残金を支払いましたが、後日F社がごみ置き場の移設に関して町内会と交渉したところ、町内会役員の一部に反対があって移設が困難ということが分かりました。
これを受けてC氏はF社に対して、「ごみ置き場を移設するか、それができないときは専用庭の柵外に植栽をし、購入価格の減額をすべき」と主張しました。話し合いにおいてF社は、「ごみ置き場について事前によく調査しておく必要があった。多分大丈夫だろうと思った」と非を認め、和解条件としてC氏の専用庭に植栽することと、解決金として40万円を支払うことになりました。
これらの事例からは、不動産会社は業務を注意深く遂行しなければならないことが改めて分かると思います。それはつまり、プロではない消費者を尊重するという姿勢を持って業務に当たることであり、社会から求められていることなのです。また、その姿勢こそが、何よりも不動産会社の差別化につながることであると考えられます。
●法務大臣認証ADR機関 日本不動産仲裁機構 電話03(3524)8013。
























