ADRの現場から 不動産会社が知っておくべきトラブル解決ノウハウ 116 情報共有不足が引き起こしたシックハウス 日本不動産仲裁機構
住宅新報 2020年5月5日 号 8面
連載: ADRの現場から
住居内での室内空気汚染に由来する様々な健康障害を総称した「シックハウス症候群」。シックハウス症候群というと、新築やリフォームをしたときだけの問題であり、住宅を建てるときに使用される建材からの化学物質だけが原因と思われがちですが、建材以外にもカーテンやじゅうたん、家具などから揮発する化学物質や、日常生活用品、ダニやカビなど様々な原因によって引き起こされます。今回は、不動産会社のシックハウスに関する知識が十分でなかったために引き起こされてしまったトラブル事例を紹介します。
建築会社A社は、シックハウス症候群を引き起こさない、自然素材にこだわった家づくりを自社の売りにしていました。そんなA社にマイホーム建築を依頼したのがB氏でした。従来から化学物質に対するアレルギーを持っていたB氏は、マイホームを建築する際、シックハウス症候群を発症させないため、A社に特に使用する建材等に注意を払ってほしいと依頼をしたのです。さらに、建築後には室内空気測定も行い、安全性を確認した上で入居をしました。
事前の対策が功を奏し、B氏はシックハウス症候群を発症することなく、快適に生活を送ることができました。しかし2年後、仕事の都合で長期にわたり遠方へ行かなければならなくなりました。
B氏は、出張中にマイホームを貸し出すことを考えました。特に、同じくアレルギーを持つ人の助けになるように、「シックハウス対策を施した物件」として貸し出すことを希望しました。また、「B氏の出張中に限って貸し出す」という明確な期限があるため、マンスリーマンションとして貸し出すこととしました。そこで、この物件の管理業務を行うことになったのがA社の不動産部門でした。
しばらくしてB氏と同じくアレルギーを持った借主C氏が見つかったのですが、入居後、C氏はシックハウス症候群と疑われる症状を発症してしまいました。このことを知ったA社が調べたところ、「家具付き賃貸物件」として貸し出していたことが問題であったと分かりました。家具等の選定はA社が担っており、その担当者がシックハウス症候群の原因が建材以外にもあることを知らなかったのです。
幸いなことに、C氏の症状が重篤なものでないということもあり、A社が無償で新居の契約を仲介することと、引越し費用を負担するということで折り合いをつけることができました。しかし、このトラブルの落ち度はA社の情報共有不足と、シックハウスに関する知識不足が引き起こしたものであり、大いに反省されるべきものでした。
これ以降、A社では建築部門と不動産部門の部門間ミーティングが定期的に開催されるようになり、シックハウスに関する勉強会も開催されることになりました。やはり、トラブルを未然に防ぐために必要なものは、正しい知識とそれを共有する仕組みなのです。
●法務大臣認証ADR機関 日本不動産仲裁機構 電話03(3524)8013
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