ADRの現場から 不動産会社が知っておくべきトラブル解決ノウハウ 114 日本不動産仲裁機構 電力自由化の知識がなかった仲介会社
住宅新報 2020年4月21日 号 8面
連載: ADRの現場から
16年4月に小売りが自由化された一般家庭向けの電力ですが、経済産業省のまとめによると、電力契約切り替え(スイッチング)率は18年9月時点で1284万件となっており、スイッチング率は20.5%となっていることが分かりました。なお、スイッチリング率は今まで右肩上がりで上昇してきているため、20年現在では、さらに上昇していることと推察されます。利用する人が増えれば、それと共に増加するのがトラブルです。特に、今までなじみのない仕組みの導入の際には、不慣れや知識不足から発生してしまうトラブルも多くなってきます。
戸建て住宅のみならず、賃貸住宅に住んでいても自由に使用する電気を選ぶことができるのが電力自由化のポイントの一つですが、賃貸仲介を取り扱う不動産会社は、この点に注意が必要です。川崎市の不動産会社R社は、お客様A氏に対する賃貸物件の仲介業務において、電力自由化に関するトラブルを引き起こしてしまいました。トラブルの原因はA氏が初めてR社に訪れた時にさかのぼります。
A氏は、携帯電話会社が提供する電気を使用しており、引っ越し先でも同じ電気を使用したいと要望を出していました。しかし、R社の営業マンは電力自由化の仕組みについて理解をしていなかったため、「大手の会社の新電力であるし、CMも頻繁に見るし、どこの物件でも大丈夫だろう」と安易に考え、引越し先でも新電力を使用できるかということを考慮せずに、物件を紹介してしまったのです。内見をした結果、A氏も物件を気に入り、その日のうちに決めて、後日に契約という流れになりました。
そして契約当日、A氏が入居する物件は、大家さんを通して建物全体で一括して電力会社と契約している物件であり、入居者の個別契約は不可であったことが分かってしまったのです。担当したR社の営業マンは、案内時にスマートメーターがあるかなども確認をしておらず、内見の際にそのことに気づくこともありませんでした。
A氏は割引ポイントなども付与されるため、当然それまでの新電力を使用したかったのですが、引越し準備も進めてしまっていたため、仕方がなく引越し先で一括受電をしている電力を使用することとしました。
不動産会社は、賃貸仲介をする際に「今まで新電力を使用していたか」「引っ越しのタイミングで切り替えるのか」などをヒアリングする必要があると考えられます。加えて、物件紹介のタイミングでは、入居を希望する物件において自由に電力会社が選べるかなども確認しておく必要があるでしょう。不動産会社からするとトラブルの可能性がある電力自由化ですが、正しい知識を持って消費者を適切にナビゲートできれば、「新生活のライフラインにも強い会社」として他社と差別化できるきっかけにもなるのではないでしょうか。
●法務大臣認証ADR機関 日本不動産仲裁機構 電話03(3524)8013
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