不動産現場での意外な誤解 売買編135 戸籍を見れば相続関係がすべて分かるか?
住宅新報 2020年4月21日 号 8面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解
Q 所有者不明土地においては、相続財産管理人制度(民法951条以下)や不在者財産管理人制度(民法25条)を利用し、相続人を探索することができるということですが、この制度を利用するときの両者の違いがよくわかりません。
A 端的に申し上げれば、前者は「相続人がいるかいないかが分からない」ときで、後者は「相続人がいることは分かっているが、その所在(行方)が分からない」ときです。したがって、前者は当然に「生死」が不明の場合を含みますが、後者の場合も「生死」が不明の場合を含むとされています(失踪宣告)。
Q そうすると、後者の場合の「相続人がいることは分かっているが」というのは、どういう意味になるのでしょうか。
A それは、「戸籍の上で相続人がいることは分かっているが」という意味です。したがって、「生きている」という意味ではありません。
Q ということは、前者も、「戸籍の上で相続人がいるかいないかが不明」ということでしょうか。
A 一応はその理解でよいと思います。しかし、いずれにしても、この両制度においては「生死」の扱いが非常に重要で、不在者の場合は、7年間生死が分からなければ失踪宣告を受けて「死者」扱いにされる可能性がありますし(民法30条、31条)、前者の場合も、その相続人が先に死亡していればその直系卑属に「代襲相続」の問題が生じますし、更にその代襲相続人が死亡していれば「再代襲」の問題が生じるからです(民法887条(3))。
Q いずれにしてもそれらの事実関係を含めて、被相続人の戸籍を見れば、相続関係のすべてが分かると考えてよいのでしょうか。
A 一応は分かりますが、すべてではありません。なぜならば、被相続人が死亡し、仮に戸籍上相続人となるべき者が見受けられたとしても、死亡後3年間は非嫡出子による「認知」の訴えが提起される可能性があるからです(民法787条但書)。したがって、私達が相続財産管理人制度を利用するにしても、それなりに時間がかかるということです。なぜならば、この制度はあくまでも他人の財産を管理・処分する制度ですから、裁判所も慎重に手続を進める必要があるからです。
渡邊不動産取引法実務研究所
代表 渡邊 秀男
























