不動産市場異聞 大東建託賃貸未来研究所・AIDXラボ所長 麗澤大学経済学部経営学科客員准教授 宗 健 第15回 AIは不動産業界の黒船か
住宅新報 2020年4月7日 号 7面
連載: 不動産市場異聞
この4月に、DX推進室といった組織を新たに作った企業もあるだろう。不動産業界では様々な不動産テックサービスが生まれており、不動産業界もAIによって大きく変わるとされている。
しかし、ほんとうにAIは、業界を大きく変えるのだろうか。そして、そもそもAIやDXとは、なんなのだろうか。
AIの範囲は狭くDXの概念は広い
AIには明確な定義はなく、本来はニューラルネットワークを用いた機械学習の手法である深層学習(DeepLearning)やRandomForest·XGboostといった統計手法、自然言語処理など、近年発展した手法でアルゴリズムを構築することを指すことが多かったが、最近では、古典的な回帰分析等も含まれるようである。
こうした技術要素としての手法は、ビッグデータを処理するデータサイエンスと組み合わせて用いられることが多いが、それでもIT全体の技術要素の広がりからすれば、専門性は高いが、その範囲はかなり狭い。
また、一方で、04年にウメオ大学(スウェーデン)のストルターマン教授が提示したDX(DigitalTransformation:デジタルトランスフォーメーション)は、経済産業省の定義もあるが、極めて概念的でイメージが難しい。それでも誤解を恐れずにシンプルに言えば、DXとは、「データとITを使いこなす」ということになるだろう。
その意味では、DXはその概念が提唱される前から、コマツのKOMTRAXやGEの航空機エンジン事業など、様々な分野で取り組みが行われてきた。
更に、IoTについては、様々なモノがインターネットにつながる、という状態を指すIT用語の一つだと理解するのが正しく、IoTを使って何をするかがDXの範疇になる。そして、DXには広い意味でのマーケティングのセンスが欠かせない。
競争力を生む統合された取り組み
インターネットとスマホは、この20年で世界を変えたが、それは、この二つが明確な価値を持つ「サービス」であり「製品」だったためである。そしてそこに、様々な企業が価値を上乗せしてきたことで、世界は変わってきた。
一方、製品でもサービスでもないAIという「技術要素」は、直接世界を変えることはできない。世界を変えるのは、AIによって新しく生み出されるサービスであり製品であり、逆説的に言えば、新しく価値があるサービスや製品であればAIが使われていなくても構わない。
不動産領域でも、家賃や価格の推定、入居審査、画像種別の判別など、様々なAIを使ったサービスが提供されているが、世界を変えるほどのインパクトはおそらくない。なぜならこれらのサービスは新たな価値を生み出すというよりも、コストを減らす効率化の側面が強いからである。
今求められているのは、個別のサービスではなく、俯瞰した視点から仮説に気づき、必要なデータを集め、AIを使ってアルゴリズムを構築し、それをITシステムに実装して新たな価値を作りだし、圧倒的な利便性とコスト競争力を持つような、市場から受け入れられ価値を認められるビジネスの構造である。それがうまくいった時に、DXと呼ばれるのだ。

























