紙上ブログ 不動産屋の独り言 珍田現場の喜怒哀楽 545 立ち退き相談で助言 欲張らなければいいものを
住宅新報 2020年3月24日 号 6面
当社で店舗を借りているお客様の話。住居にしている貸家の老朽化により立ち退きを迫られている。マンションに建て替えたい家主から「猶予期間」を与えられることもなく、問答無用で立ち退き訴訟を起こされた。
弁護士連名で
相談を受け、訴状を見せていただいたが、原告代理人の弁護士は4人連名になっている。私からすれば「我々は能力がありません」と言っているようなもので、弁護士の頭数を並べれば、素人は怖がって裁判になる前に出ていくだろうと思っているのが透けて見える。当社のお客様は立ち退き料など一切求めていない。ごねて立ち退き料を多く取ろうなどとさらさら考えていないのだ。すぐに立ち退けないのは訳があって、奥様が治療をしていて「デリケートな時期なので今すぐ環境を変えられないから1年ほど待ってほしい」と希望しているのである。
訴えを起こす前は建設会社の営業担当者が夜遅くに訪問してドアをノックしたり、ご主人がいない平日の昼間に訪ねてきたり、かなり強い文面の手紙を郵便受けに入れていったようだ。私が「世間一般の常識的な立ち退き料はもらえばいい」と言っても、ご主人は「お金の問題ではないし、お世話になっているのも事実なので立ち退き料なんていりません。ただ女房のために時間がほしいだけ」と言う。
一方的な理由
「これ、2カ月しか猶予を与えていないし、老朽化といえども家主都合の立ち退きだから裁判になってもこちらの言い分が通るでしょう。何も心配しないで大丈夫」と言っていた直後の訴訟である。大体、老朽化で危険と言いながら一度も補強工事などしておらず、立ち退き料も払わずにすぐに出ていけ、なのだから、その内容で受ける弁護士がいるのか不思議な話だ。
私が「こちらは弁護士など付けなくて大丈夫だよ。こんな訴訟で負けるわけがないから。弁護士を付ければお金もかかるしね。乗りかかった船だから私が裁判の傍聴に行きましょうか」と言うと、気を使って辞退する。
判決は全面的にお客様の言い分が認められて、猶予期間も与えられ、立ち退き料まで払ってもらえることになった。家主は欲をかかなければよかったものを、と笑ってしまった。
(坂口有吉不動産・社長)























