明海大学不動産学部 不動産の不思議 学生たちの視点と発見 第326回 屋根を隠すデザインの効果 狭さや安っぽさを減らす
住宅新報 2020年3月24日 号 4面
【学生の目】
住宅の個性を彩る要素として、屋根の形があることは言うまでもない。これまで多くの屋根の形を見ては、そのデザインと工夫に感銘を受けてきた(朽方勇祐「不動産の不思議第214回」17年12月19日号)。今回、その屋根を隠している家を見つけた。
JR京葉線「潮見」駅周辺を巡検していた際に、意表を突くデザインの建物に出合った。正面の外壁が長方形の建物で、疑うことなく陸屋根の建物と思うのだが、側面から見ると勾配屋根になっていることに気付く。屋根を隠すように外壁がそびえている(写真)。
なぜ屋根を隠すのかを考えるヒントを得るために、街の歴史を調べた。東京都港湾局発行の『東京湾史』によると潮見は埋立地で、かつて産業廃棄物の処理場に利用されていた。そのため自動車整備や造船等の工業が発展し、今も至るところに関連事業所が存在する。
屋根を隠して外壁を強調する建物は、アーケード街の商店のようでもある。工業地域の街の雰囲気に合わせつつ、商店としても違和感のない建物にする工夫をした結果と考える。
考えられる他の原因は敷地の狭さだ。東京駅まで3駅と交通の便に優れる潮見は、工住混在ながら地価が高い。そのため、敷地を狭くし、建物を隣地境界線近くまで配置した3階建ての住宅も多い。不動産市場の需給が均衡した状態といえるが、建築意匠の面では、屋根面積が少なく外壁とのバランスが悪い、庇が取れないために重量感のある屋根がつけられないなどの課題がある。更に、緩勾配の屋根をつけると住宅そのものが安っぽく見えてしまう。
写真の住宅では屋根を見せない方法を採用して課題を解決するだけでなく、屏風のように切り立った外壁面がメリハリと重量感をもたらしている。オープン外構も効果的だ。狭い敷地で玄関を後退させて植栽をすることは思い切りが必要だが、道路空間に広がりをもたらすとともに、外壁面を強調する効果がある。オープン外構と屋根に対して壁を優先する方法によって街の風土に合わせつつ、小ぶりな住宅の印象を変えている。2つの方法の組み合わせに斬新な工夫を感じた。
大都市では広い敷地に広い住宅を建てることは難しい。敷地が狭く隣地との間隔も狭い住宅は少なくない。そうした建物でも、あまりお金をかけることなく、狭さや安っぽさを減らす工夫ができることを学んだ。
【教員のコメント】
前庭部分を半公共的な領域として街に開放する手法は英米の住宅で採用され、地域の価値につながる。オープン外構は私的領域とされてきた日本の住宅の庭に半公共性を付与したが、建物デザインとの組み合わせが新しい作法となる可能性がある。























