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プレミアム会員限定知って得する建物の豆知識 281 アスベスト 耐火建築物がターゲット

住宅新報 2020年2月18日 号 8面

連載: 知って得する建物の豆知識

資格・実務
鉄骨材の耐火被覆

鉄骨材の耐火被覆

 鉄は一定の温度までは丈夫な素材ですが、約500℃を超えると一気に強度が低下します。9.11で崩壊した世界貿易センタービルは、突入した飛行機が鉄骨構造耐火被覆材を剥離させ、燃え上がった航空燃料が露出した鉄鋼構造を直接加熱したため、一気に強度が低下し、崩落のきっかけが発生しました。この「耐火被覆」に使われたのがアスベストです。日本でも1975年頃まで耐火材として、ボイラー周りや配管類の保護材として盛んに用いられました。一般住宅でも安価で性能の良いことから、屋根材や外壁材として大量に使用されました。中古マンションや中古オフィスビル、中古住宅の取り壊し工事において、アスベストの処理は現在でもネックになっています。

重い病気に

 アスベストは「石綿」とも呼ばれる鉱物です。「綿」という言葉が示す通り、繊維状の鉱物で、耐熱性・耐薬品性・電気絶縁性といった優れた特性を持ちながらも安価であるため、工業分野や建築には大量に使われてきました。

 細片化したアスベストは肉眼では見えないほどの小ささ(0.02~0.35マイクロメートル)になって空中に飛散・浮遊します。人の肺は最深部で数100マイクロメートルのぶどうの房のような風船状構造で、綿や羊毛、紙の繊維などが進入しても、食細胞がこれらを包み込みタンとして排出できます。しかし、アスベストのような鉱物繊維を吸い込むと、肺の繊維組織が増殖する肺繊維症を生じ、肺気腫や肺がん、悪性中皮腫などの発症につながります。しかも、発症まで15年~40年と、長い時間がかかるため問題が複雑化する原因物質です。

 ロシアやカナダから輸入されたアスベストの一部は自動車用のブレーキなどに使われましたが90%以上が建築用途として利用されました。製品形状には、吹きつけ材と成形版があり、吹きつけ材はセメントに混入して耐火・断熱目的として構造材に30~60ミリの厚さに吹き付けられており、経年変化によってアスベストがセメントから遊離して空気中を浮遊します。成形板はアスベストをセメントで固め、高圧養生したものですが、これは経年変化にるアスベストの遊離は少ないのですが、建物解体時に細片となって空中に飛散します。

 アスベストが盛んに使用された時期は日本が高度成長期に湧いていた1955年~75年に建築された物件が多く、75年から89年にかけてはロックウール断熱・吸音材として使用されており、これも注意を要します。

 アスベストは耐火被覆としての使用が多いため、まずは耐火建築物がターゲットです。具体的には、先ほどの時期に防火地域や準防火地域に建てられた3階建て又は200m2以上の鉄骨構造建築物には、アスベスト吹きつけ材が使用されていると考えてほぼ間違いありません。確認するには点検口などから構造体を目視した時に、綿状の素材が吹き付けられていれば、それがアスベストです。

 アスベストの除去に当たっては労働安全衛生法(石綿障害予防規則)、廃棄物処理法をはじめとする様々な規制に対する手続きが必要です。不動産鑑定評価基準では石綿を使用した建築物について、飛散防止や除去の措置等、対策工事の必要性から建物の経済価値のマイナス要因となります。また、証券化対象不動産については不動産鑑定士以外の専門家による調査が必要です。宅地建物取引業法第35条に基づく重要事項説明では、当該建物について石綿(吹きつけ)使用有無の公的調査記録がなされている場合は、その内容が説明事項に定められており、注意が必要です。

   (建築家・中村義平二)

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