不動産現場での意外な誤解 賃貸借編130 貸主からの明け渡し交渉の決め手は立ち退き料か?
住宅新報 2020年2月11日 号 8面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解
Q 以前のこの賃貸借編のコーナー(第127回)で、貸主からの解約申入れには正当事由が必要であるが、その正当事由は、申入れ時にはなくても、後から具備すれば明け渡しは可能だと書いてありました。となると、貸主は、この判例をタテに、さほどの理由もないのに借主に対し明け渡しを強要するのではないかという心配がありますが。
A 確かにその心配はあります。しかし、いかに「後からでもよい」といっても、全く理由もないのに明け渡しを迫るというようなことはないと思いますが。
Q しかし、あの判例の趣旨からは、まずは明け渡しの請求をして、後から立ち退き料を払うとか、増額をするといったやり方が当然できると思ってしまいます。
A そのように誤解される可能性はありますが、まずは、その前提として、貸主側にどうしてもその建物を使用しなくてはならない事情があるということが必要で(借地借家法28条)、そういう事情もないのに、単にその建物を使うとか、他に売るといった理由で立退きを要求するということは許されません。
ただ、問題となるのは、建物が古くて、大修繕が必要になるとか、地震等による危険があるといった事情がある場合です。このような場合は、それはそれなりに「正当事由」となり得るものですから、その主張には正当性があります。そのほかにも、再開発による土地の有効利用といった事情がある場合にも、裁判所はかなり柔軟な対応をとっています。しかし、その場合には貸主側の受ける利益が大きいこともあって、かなりの額の立ち退き料を支払わないと、正当事由として認めないという対応をとっているようです。
Q ところで、その裁判所が判断する立ち退き料の中には、どのような補償料が含まれているのでしょうか。
A 一般的には、(1)移転料の補償としての引っ越し費用と移転先確保のための費用、それに(2)消滅する利用権の補償としての借家権価格、そして(3)建物が商業用のものである場合の借主が被る不利益の補償としての営業権とその場所的利益――などが挙げられています。
渡邊不動産取引法実務研究所
代表 渡邊 秀男
























