明海大学不動産学部 不動産の不思議 学生たちの視点と発見 第320回 マンション開発とデザイン 社会性踏まえたデザイン力
住宅新報 2020年2月11日 号 4面
【学生の目】
これまで個性的な建物をたくさん見てきた。意識的に個性を見いだそうと努めてきたともいえる。個性的な建物は街のランドマークになりうる一方で、街の景観を壊してしまうおそれがある。不動産は個で判断するのではなく、近隣との相互関係で見る必要があると学んできた。
今回の不思議は、1~2階が古風な店舗で、上階がマンションになっている建物だ。いわゆる下駄履きマンションだが、店舗部分の個性が際立ち、独立した建物に見えるほどだ(写真)。
低層階と上層階がはっきりと異なるデザインの建物といえば、丸の内のオフィスビルを思い浮かべる。調べると以前のビルは、容積率制導入前の旧建築基準法が定めていた31メートル(100尺)の絶対高さ制限のもとで建てられ、高さがそろっていた。容積率制の導入やコンピューターによる構造解析の進歩、更には都心部の土地に対する高度利用の要請があって、都市計画法や建築基準法が見直され、今では31メートル超のビルが一般化した。
丸の内のオフィスビルの建て替えでは、あえて、昔の情緒ある雰囲気を残すと共に、かつてのスカイラインを引き継ぐ方針を立て、今日見られるような、低層階と上層階で異なるデザインを採用した。近隣のビルが歩調を合わせ、歴史的要素を伝承するデザインで地域の雰囲気を守り、かつ、創った良い事例である。
写真のマンションはどうだろう。地域との関係では、駅に近く、整然と新しいマンションや事務所が立ち並ぶ中、店舗のにぎわいを提供してはいるものの、雑然感を増している印象を受ける。単体の建物としても、デザインの一体感に欠ける。
異なるデザイン性をもつ下駄履きマンションは、等価交換事業で建てられたものが多いという。等価交換事業は、土地所有者とディベロッパーの共同事業で、土地所有者の合意がなければ事業が進まない。ディベロッパーは、土地所有者の意向を尊重せざるを得ない。
また、土地所有者が設計時に自分が取得する専有部分の設計に希望をいう機会がある。このため、等価交換事業では建物全体のバランスよりも土地所有者の意向が優先される素地があり、通常の分譲マンションでは想像できないような建物が実現することにつながる。
異なる用途を一つの建物の個性にするためには、建物の社会性を踏まえたデザイン力がひときわ大切となる。
【教員のコメント】
等価交換事業は租税特別措置法による事業で、ある企業の造語の名称が定着した。土地価格の高騰や住宅不足より活況を呈したが、今は下火である。一方で、土地所有者の高齢化、後継者がいない中小企業用地など、再び注目される可能性がある。























