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プレミアム会員限定知って得する建物の豆知識 278 建築鑑賞術(インテリア編) ストーリーの流れをつかめ

住宅新報 2020年1月7日 号 12面

連載: 知って得する建物の豆知識

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心理学を応用したコンサートホールの例

心理学を応用したコンサートホールの例

 一昔前のインテリアコーディネーションはカラーコーディネーションが主体でした。ホワイトでまとめる、ベージュでまとめるという具合に全体のカラートーンを決め、そこにポイントカラーを配するのが王道でした。次の時代はマテリアルコーディネーションの時代です。錆びた鉄の板に磨いた厚い木の板を組み合わせたり、ガラスと石を組み合わせたりして新しい感覚・見せ方を競いました。ちょうどバブル最盛期でもあったので、外国の珍しい素材がふんだんに使われました。

 現在では、新しい方向が二つ見えています。一つはスタイルコーディネーション、もう一つはサイキック(心理)コーディネーションです。スタイルコーディネーションはある種の様式をベースにして、これを時代に合わせてアレンジする方法です。ヨーロッパのコーディネーションはほとんどが、このスタイルコーディネーションになっています。「モダン」というのも一つのスタイルとして規定されています。後者は心理学を応用したコーディネーション方法で、次世代のコーディネーションと考えられます。

 という前提で、インテリア鑑賞では、まずはその空間に入って360度を見回し、全体を感じることです。何を感じるかは個人個人ですが、五感を研ぎ澄まして「感じたこと」が空間鑑賞の基本になります。それは言葉にすれば「暖かさ」「柔らかさ」「鋭さ」「優しさ」「親しみ」「明るさ」「暗さ」などかもしれませんが、このファーストインプレッション(以下=インプレ)が重要です。インテリアデザインは多分に心理学や錯視(目の錯覚)の応用であり、インテリア鑑賞はそのインプレに総合されるからです。

 次にインプレをベースに部位を鑑賞します。最初に「床」ですが、デコボコした石畳なのか、フカフカした絨毯なのかは、視覚と共に足裏からの情報で補強されます。その情報が最初のインプレと違和感がなければ心地よく感じ、違和感がある場合には、それが何なのかを確かめます。設計者があえて違和感を感じるようデザインしている場合も少なくありません。

 「壁」は視覚が中心になり、大きさ、形状、陰影などの程度から、特定のイメージを受けます。壁の形状は空間のイメージに大きく関わります。壁が湾曲していたり、内側または外側に傾斜することで、包み込まれるような、あるいは広がるような印象を持つことができます。荒い表面を持つ壁が手前に傾斜しているような空間では、不安感や圧迫感を持ちますし、柔らかな緞子(どんす)張りの壁面が緩やかに湾曲している壁は、包み込むような母性を感じさせるかもしれません。受けるイメージを言葉にすることは、空間体験を蓄積・記憶して行く方法の一つです。

 「天井」は視覚のみで体験しますが、その高さと床面積との関係で空間を特徴付けます。平面が小さく高さが高い場合は井戸の底に入ったように感じますし、一定の高さがあっても、平面に比して高さが少なければ、圧迫感を生みます。

 インテリアにおける人の移動は時間を伴います。この時間軸の上に異なる素材や意匠を配置することで、コントラスト効果を出しているかもしれません。コントラストは「対比」ですが、アクエイタンスは「馴致」で、違和感が発生しないように連続性やスケール感を維持することです。この対比と馴致を積み重ねて行くと、そこにはストーリー性が生まれます。これは人が最も理解しやすい感覚であり、その流れをつかむと一気にインテリア空間の理解が進みます。 (建築家・中村義平二)

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