明海大学不動産学部 不動産の不思議 学生たちの視点と発見 第305回 イギリスの立体駐車場 〝悪くならない〟判断基準に普遍性
住宅新報 2019年10月22日 号 4面
【学生の目】
不動産学部主催のケンブリッジ大学研修に参加し、夏休みの10日間程をイギリスで過ごした。イギリスの都市や不動産を学ぶ中、面白い建物を発見した(写真)。一見しただけでは、何の用途に使われている建物なのか理解できなかったが、じっくりと観察すると立体駐車場であることが分かった。
イギリスは昔からある建物を保護すると共に、建て替える場合でも統一感のある古い街並みや景観を保つことを重視しており、都市計画や建築の手続きにもそれが色濃く出ている。例えば、慣習法のイギリスでは建て替えに際して公聴会が開かれる。公聴会には地域住民も参加して意見を述べ、議決に参加する。
意見や議決の根拠は、「周辺地域にとってこれまでよりも悪くならない」ことで、高さや材料が規定され、結果として街並みが維持される。成文法の日本では技術基準によって許可や確認が行われ、容積率や斜線などの形態制限の範囲内で、自由な形状で建築することできる。材料や色彩も日本では制約がない。
写真の立体駐車場は、統一感のある街並みの景観を損ねることなく、むしろ街並みを構成する一つの建物として溶け込んでいる。日本の一般的な駐車場と比較すると、景観への配慮に格段の違いがある。その差はどこから来るのか、具体的な建築手法で理由を考えた。
第1は、構造が露出していないことである。日本では柱や梁がむき出しで、すぐに立体駐車場と分かるが、写真では構造が外側から見えず、外観はレンガ造りの事務所ビルのように重厚である。
第2は、換気のための開放部分の違いである。日本では何も付けずに開放するか、グレーのルーバーで目隠しすることが多い(今川知治「不動産の不思議第74回」15年3月10日号)が、写真では街並みに合わせた模様を施したレンガ色の金属で覆い、店舗ビルのショーウィンドーのように芸術的である。
両国の立体駐車場を比較すると、イギリスでは景観を重視し、日本では機能性を重視しているように思える。一概にどちらが優れているか判断することはできないが、少子高齢化による人口減少や若者の車離れが進む日本では、立体駐車場が余分な不動産となる可能性がある。遊休化した立体駐車場が放置される事態を招かないよう、機能性や技術基準を超え、景観にも目を向けていくことが必要なのではないかと考える。
【教員のコメント】
新築や開発による環境被害に対して成文法の仕様規定や集団規定は相応に効果的であった半面、放置空き家の外部不経済には無力だ。一方、判断基準「周辺地域にとってこれまでよりも悪くならない」は無作為に対しても適用でき、普遍性がある。























