住宅の建築を考える場合、間取りや外観にはこだわっても、外構まで神経を使う人は多くありません。しかし、住まいはエクステリアまで含めたデザインがあってこそ、完成したものになります。特に玄関周りは重要な演出ポイントです。その演出の要になるのはアプローチの考え方です。
アプローチ構成は、住宅のイメージが和風寄りであれば日本的なアプローチを、洋風寄りであれば西欧的なアプローチを構成することが基本になります。また、各エレメント(植栽や外構部品など)のプロポーションが重要です。例えば西欧的なプロポーションの代表には「黄金比」があり、日本的なプロポーションには「753の配置」(266回に登場)があります。
アプローチの取り方にはその敷地形状や建物のデザインによってさまざまですが、基本的に押さえておかなければならないポイントやパターンがいくつかあります。まずはアイストップやシンボル(植栽や外構部材、照明器具など)の配置によって視線を誘導し、アプローチ空間を豊かなものにします。こうした演出は日本庭園では典型的な手法です。
イングリッシュガーデンは「風景式庭園」と呼ばれ、絵画のように一点から眺めて鑑賞することを主眼に置いていますが、日本庭園は「回遊式庭園」と呼ばれ、庭園の中を人が歩いて移動しながら、あたかも映画を見るように鑑賞することが原則です。回遊式庭園は、仏教の教えを庭園の中に物語的に展開したことに起源がありますので、移動することが前提だったのです。玄関アプローチにおいてもこうした視線誘導は非常に効果的です。
図は演出効果の高いS型アプローチです。アプローチは一度曲がるだけで、周囲の見え方は大きく変化します。図中の板は「アイストップ」と呼ばれるデザイン要素で、視線を誘導するエレメントです。アイストップ要素の主体は植栽や花卉類、照明、置物などです。アプローチの形状はS型の他にもL型やU型も考えられます。
案外危険な枕木 視線誘導を設定したアプローチは注意が逸れるため、足元の素材選択が重要になります。安全性が高いのは眠り目地(極細の目地)の敷石で、御影石や石英岩が多く使われ、表面は小叩きやバーナーで焼き付け粗面に仕上げます。予算がない場合はインターロッキングがよく選ばれます。インターロッキングはコンクリートブロックの一種ですが、モルタルなどに比べ、滑りにくく、水はけがよいという特性があります。枕木をアプローチに埋め込む例を見ますが、これは案外危険です。枕木は苔やカビが生えやすく、雨天や降雪時には大変すべりやすくなるからです。
視線誘導における独特なエレメントとして「結界」があります。作庭等では石をシュロ縄で結わえて飛び石の上に置き、結界(立入禁止)としたりします。本来の結界の意味は悪霊が侵入しないために設けるバリアーで、江戸や京都には都市の結界として、神社などが要所に造られています。精神的でシンボライズされた結界ですが、西欧の文化には決して見ることのできない日本独自のエレメントです。
アプローチを通してエクステリアを考えるときには、エレメントが持つ意味を意識する必要があります。プロダクトデザインでは「面」の意味を意識してデザインされています。正面は「性格・個性」、側面は「知性・理性」、裏面は「優しさ・精神性」を表すとされています。アプローチは人が移動しながらデザインを見ることになるため、各「面」の持つ特性を理解しておくことが大切です。
(建築家・中村義平二)

























