紙上ブログ 不動産屋の独り言 520 賃貸現場の喜怒哀楽 高齢女性の引っ越しで立て替え 入居後3年、やっと契約金もらう
住宅新報 2019年9月24日 号 6面
今から10年前、以前からよく知っているお客さんの部屋探しをした。今も働いている人だが、それなりにお年を召している女性である。当社で管理していたマンションに入居していたのだが、その部屋が売りに出されたため、途中から別の不動産会社に管理が変わった。その会社の社長は私がとてもお世話になっている方なので、もちろん、そのことに異議も不満もない。これまでも息子さんが結婚して独立することになり、お客さんがもっと狭い部屋に移る際などにもいろいろと相談に乗って頂いたりした。
バイトの掛け持ち
この女性については、実は、当社で管理させて頂いていた頃から家賃が遅れ気味ではあった。だが、真面目な人で、それを気にかけて、少しずつでも支払いが追いつくようバイトを3つも掛け持ちしていたようである。踏み倒して無責任に逃げ回るような人なら相談に乗ることもなかったと思うが、懸命に生きている。
とはいえ、今までのマンションを退去するに当たって、とても減価償却と言って済ませられるような状態ではなかったので、敷金だけでは足りず、どうしても追加請求が発生することになった。だが、原状回復費の自己負担分を清算したら、新しい部屋の契約金など支払えるものではない。差額が発生するのは本人も了解していたので、管理会社の社長に分割にして頂けるようお願いすると快く了解してくれた。後は、新しい部屋の契約金の問題だが、そんな金はない。
重い現実
当社の管理物件で決めて頂き、契約金17万円は当社で全額を立て替えることにした。それについては、原状回復費の支払いが完了してから当社に支払ってもらう、ということにさせて頂いた。その支払いがやっと終わり、当社への支払いが始まったのは2年後。当社分が完済されたのはそれから1年後のこと。契約金の立て替えを「便宜供与で違法だ」というなら、それは正しいと思う。だが、そうして差し上げなければ部屋が借りられない人もいる、という現実がそこにはある。立て替えは当社にとっても厳しいし、生活保護の申請をするよう勧めたが、安易に生活保護を受けることなく、一生懸命に生きているのだから、不動産屋として力になりたい。
(坂口有吉不動産・社長)























