「首都圏春の賃貸繁忙期」 各社対策進め、成約獲得へ
住宅新報 2019年5月7日 号 7面
単身向けでステージング進む(エムツーオフィス)
主に売買物件の室内を家具や小物で魅力的に演出する「ホームステージング(HS)」。日本ホームステージング協会の法人加盟企業で、この売却促進手法を賃貸領域で積極的に行うのが16年創業のエムツーオフィス(東京都世田谷区、三上正彦社長=写真)だ。
同社は不動産事業部とホームデザイン事業部で構成。社員4人体制で、賃貸・売買仲介、リフォーム等を手掛ける。中でも主軸とするのは賃貸管理で、「大家、地主、投資家に寄り添う物元になりたい。オーナーの視点に立ったサービス提供が必要だ」と三上社長は話す。現在の管理戸数は創業時の約10倍となる200戸に達した。3年後には管理戸数1000戸を目指しているが、そもそも独立開業のきっかけとなったのが、オーナーの資産に寄り添う対策として始めたHSだった。
同社のHS事業は、社員自らがホームステージャーを務める。世田谷区内に倉庫を持ち、自社が選定した上質な家具を使用。都内23区や横浜・川崎エリアをはじめ1都3県で対応する。HSブランド「ホームステージングファクトリー」を立ち上げ、自社が保有する在庫家具や小物を全国のステージャーに使える仕組みを推進する点も特徴だ。「入居者が希望すれば、HSで用いた家具をそのまま借りられる仕組み。月額賃料の向上に貢献できる事業を進めたい」(三上社長)と将来の拠点拡大を視野に入れている。
18年春のHS受注件数5件から19年春の繁忙期は25件に急増した。内訳もこれまでの買取再販や新築戸建てメーカーの売却物件中心から、19年春は初めて賃貸オーナー(個人投資家)の物件で導入が進んだ。25件のHS実績のうち5件が賃貸案件でシングル向け。賃貸料金の1.5カ月分を目安にサービス提供しており、「オーナーから新たに管理物件を預かるきっかけとなった。また『賃貸管理を頑張ろうと思った』といううれしい言葉もいただいた」と振り返る。
同社が所属する全日本不動産協会東京都本部世田谷支部では昨年、HSのセミナーを開催するなど、普及活動にも前向きだ。「約20人の参加者はオーナーの早期成約を考える賃貸管理会社が目立った。地場の不動産会社にこそ広がるべきであり、HS市場の活性化に向けて、より高品質なステージングが提供できるプロ事業者の確立が求められる」(同)と課題を指摘した。
物件自動入力、賃貸版に拡大(センチュリー21・ジャパン)
センチュリー21・ジャパン(東京都港区、長田邦裕社長)はこのほど、「AI取り込み君for賃貸」をリリースした。これは18年10月にリリースした「AI取り込み君for売買」の〝賃貸版〟で、AIを駆使して不動産業者間に流通する物件シート等からの物件情報を自動で入力する機能となる。
同社によると、基本項目の最低取り込みの精度は約80%だが、運用の中で学習を繰り返し精度向上を図る。本格運用となる秋商戦に向けて、各支店で説明会などを展開中だという。導入に向いた店舗規模などは不問で、「不動産知識がなくても物件入力ができるようになる」(同社広報)と入力業務の軽減を期待する。
なお、同社では加盟店向けに提供している不動産業務支援システム「21クラウド」と連携して利用できる『AI間取り図作成機能』を昨年10月にリリースしている。売買のみ、賃貸のみ、売買賃貸共通の3タイプで、これまでに150店舗以上、約3400回(間取り図数)の利用があったという。利用会社からは「簡単に操作できてストレスが減った」といった声が寄せられている。
IT重説、遠方借主で活用(ホワイトホームズ)
東急池上線が走る東京・大田区で不動産管理・賃貸・売買等を行うホワイトホームズ(河津文三社長)は、ローカル線沿線というアクセス条件を逆手にとり、管理戸数地域一番を目指す。久が原本店と鵜の木店の2店舗を展開。19年1~3月の貸室契約件数が合計155件(前年同期比13件増)で、同時期の賃貸仲介売上高が過去最高を記録したという。
同社では繁忙期のピークが年々早まっていると受け止め、「今年も1月後半から2月後半までがヤマ場。3月は10日を過ぎると来店も電話も極端に少なくなった」(オーナーサービス課コンサル室室長・渡辺広美氏)と振り返る。売上増の要因については、従業員の拡充とスキルアップによる件数の増加と分析する。
同社では、いち早くIT重説への取り組みを開始。18年9月~12月は月1~3件の実施があった。19年春は更に1月3件、2月6件、3月2件と実施件数を増やしており、「特に遠方の管理物件は、地元の仲介会社が客付し、ほぼ全室をIT重説で当社が借主に説明している」(渡辺氏)と手応えを得ている。
また、最近の物件オーナーの賃貸対策の一例として、「女性目線の家事動線を意識した洗濯物干しや収納のほか、建物の外観や眺望に合う室内カラーや素材選び」(同)を挙げている。
〝自動追客〟利用者100万人に(イタンジ)
イタンジ(東京都港区、野口真平社長)は4月25日、同社が提供する「ノマドクラウド賃貸」の利用顧客数が累計で100万人を突破したと発表した。これは不動産賃貸仲介業者向けの自動追客・顧客管理サービスで、AIチャットやLINEを活用し、スマートフォンのユーザー世代にあったコミュニケーションスタイルをとる。17年10月のサービス開始から約2年半で累計利用者数が100万人を突破し、導入仲介会社数は92社となった。
今春の繁忙期は大手を中心に導入が進み、「月の顧客登録者数は18年4月比で2.5倍に増加した」(同社広報)。現在の導入企業は複数店舗を展開する中・大規模の仲介会社で、「今まで追客しきれなかった顧客に対応できるようになり来店率が上がった」や「顧客情報が他のメンバーと共有できるようになり、サポート体制ができた。顧客対応速度が上がった」といった声が寄せられているという。
同社では今後、地図上で物件を検索し、エリア状況を把握した上で物件を検索できる機能や、100万人の顧客データを解析し、確度の高い顧客を自動抽出する機能の追加も予定。国土交通省が進める賃貸契約の電子化を見据え、賃貸取引全体のオンライン化を促進していく。
海外視点 「スーモ」編集長・池本洋一氏 共用部拡充で賃上げ図る
4月中旬に米国ロサンゼルスの不動産市場を視察してきた「スーモ」編集長の池本洋一氏が、米国と日本における賃貸市場の共通点や差別化のポイントなどを語った。
ロサンゼルスと東京の市場で共通する点は、ロスではグーグル社員は郊外戸建てではなく、中心市街地のアパートメントに住む傾向が強い。日本でいうマンションだが、ロスでは新築が建ち、リノベーション物件もある。
市場の違いは、所有物件の賃料への転嫁。東京は坪単価300万~350万円なので、豊洲などで築10~15年、70m2のマンションが7000万~8000万円。これはロスも同じ傾向だが、この物件を賃貸に回したとき、ロスが月35万円の賃料を取れるのに対して東京は25万~30万円となる。つまり、ロスの方が価格転嫁できている。理由として、日本のように借地借家法で入居者を守るという点が弱いので、賃料設定が市場の動向に敏感だ。入居者は必要な支払いや退去を求められることもあり、シビアといえる。
今後の賃料収入のヒントとなりそうなのが共用部の充実だ。例えばロスでは総戸数50戸のマンションでも共用部が充実し、バーベキューテラスやミーティングルーム、プールなどを備える。日本では200戸ほどでないと共有施設の拡充は難しいが、専有部がコンパクトでも共用部が充実している方がトレンドだ。今後、東京の住宅で事業者に期待されるのは、付加価値で補う考え方ではないか。専有面積は多少狭く家賃が高くても、共用部の充実度を図る方が差別化になる上、若い人のニーズに応えているだろう。



























