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プレミアム会員限定紙上ブログ 不動産屋の独り言 495 賃貸現場の喜怒哀楽 坂口有吉 このお客さんを信じる(1) 別れた子供に会おうとしたが…

住宅新報 2019年3月26日 号 7面

連載: 不動産屋の独り言 〜賃貸現場の喜怒哀楽〜

売買・賃貸仲介

 6年前のこと、30代半ばの男性が来店した。明るい笑顔で、「駅から遠くても構いません。ワンルームか1Kの部屋を紹介してください」と言う。職業は鳶職とのことで本人は審査が通るか気にしていたが、「心配ありませんよ。私の父親も鳶職でしたから、そういうことで差別はしません。内容さえ間違いなければ家主さんに相談してみますから」と言うと、安心してくれた。いろいろ世間話をしている中で、「結婚はしなかったの?」と聞くと、「以前は結婚していましたが、別れてしまって…」とのこと。後の言葉を飲み込んだので、私もそれ以上は突っ込まずに話題を変えた。  

壮絶な過去 

 隣町だが、当社の管理物件の1Kの部屋を案内すると気に入ってくれた。申し込みをもらい、「家主さんは私に任せてくださると思うので、審査のことは心配しなくていいですよ」と伝え、更に雑談をしていたら、お客さんも心を開いてくれたのか壮絶な過去を語り始めた。若い頃に結婚をして子供も授かったが、今は中学生になった子供は児童相談所にいるとのこと。「母親もいるんでしょ?なぜ施設に預けられているの?」と聞くと、離婚した時点で親権は母親に行ったが、その母親が大麻を使用していて逮捕されたことと、子供が父親との生活を望まなかったことで児童相談所に預けられたようだ。面会も拒絶され、以来、子供の顔は見ていないとか。ところが、である。本人も2度の逮捕歴がある。なるほど、子供の意思だけでなく、そういう事情も加味されたのなら自己責任である。

親権持つ母親

 どんな罪を犯したかというと、最初は強盗、2度目は過剰防衛による傷害。いずれも示談が成立したので、実刑は免れて服役はしていない。親が示談金を払ってくれたようで、更生した今は九州にある実家への出入りは許されていないが、折に触れて仕送りをしているとのこと。荒れた時代もあったが本来の心根は優しいのだろう。今の表情からそれが読み取れる。子供と暮らした期間も短かったけれど、一度は子供に会うために養護施設を訪ねたという。施設が母親に確認したら「そんな男は知らない」と拒絶され、子供に会えなかった。ところが、母親のほうがもっとひどかったようだ。 (坂口有吉不動産・社長)

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