国民生活センターと全国の消費生活センター等に寄せられる消費者トラブルに関する情報を収集しているシステム「PIO―NET」によると、賃貸アパートやマンションにおける敷金・原状回復トラブルは年間1万3000件から1万4000件程度で推移しており、不動産関連トラブルの中でも最も多い案件の一つであることが分かります。したがって、事業者がこの種のトラブルを円滑に解決したり、未然に防ぐことができれば(未然に防ぐためのポイントを伝えることができれば)、賃貸オーナーや消費者からの信頼を獲得する極めて有効な手段となります。
まずトラブルを円滑に解決するポイントですが、これはADRの活用であるといえるでしょう。なぜADRが有効かというと、それはトラブル発生の原因を分析すれば分かります。「敷金・原状回復における定められたルールが知られていない」「ルールが知られていないからこそ、賃貸オーナー、入居者に各々の思い込みや決めつけがある」ということ。裏を返せば「ルールを周知すればトラブルは解決する」といえます。そのためには、話し合いによるトラブル解決の手段であるADRが最適なのです。
いざ裁判となってしまえば、残るは「勝つか負けるか」です。当然、互いが自分の正当性を認めさせることに焦点を合わせるため、敷金・原状回復のルールを知ったところで双方の主張が変わることはありません。一方、ADRでは「話合いによる譲歩」の余地が残されているため、「ああ、そういうことなのか」と双方の思い込みが解消されることで、和解を実現させることができるのです。

























