マンション管理応援歌No.163 廣田信子の紙上ブログ 「このマンションが好き」が耐震改修の出発点
住宅新報 2018年10月16日 号 6面

廣田信子さん
旧耐震マンションを耐震診断・改修なしに「リノベーション」していいのかが話題になりました。専門家に聞くと、耐震性の本診断を実施するマンションは限られる。本診断で耐震性不足が分かっても多くはそこで止まる。数少ないマンションが改修設計まで進むが、耐震改修費用(戸当たり300万円~500万円)がネックで、耐震改修まで進むのは数えるほどだ。今後も耐震改修は行わないと総会決議するマンションすらある…と。
では、旧耐震マンションをリノベ物件として購入する人の意識はどうなのか。業界の知人に聞くと、「耐震性の前に、この築年数の建物の価値はゼロ。だから安く入手できる。立地と価格が合えば、フルでリノベしても、新築の半分から3分の2で気に入った暮らしが手に入るのだからニーズはある。大地震でも、マンションの倒壊で人が亡くなったことはない。リノベで投資した専有部分に地震保険をかけておけばリスクは最小限に抑えられる。そもそも、耐震性が気になる人は、高くても新築、築浅マンションを最初から探すはず」…と。
専門家は言います。耐震改修助成が新耐震基準を求めるのはハードルが高過ぎる。段階的な改修を認めている自治体もあるが、将来、計画通りに実施しなかったら、補助金を返還してもらうと言われると踏み切れない。大規模修繕工事の時に、特に危ないところだけでも耐震改修を…と勧めるが合意形成は難しい。むしろ、必要な計画修繕工事が一段落した時に、初めて耐震改修の検討が少し進む。自分たちでお金を出せる範囲(概ね総額1000万円程度)で、ピロティやバランスの悪い部分を改修を行うのがせいぜいだが、それでも大きな意味があるといいます。
ここで暮らしたい
まず、耐震改修で安全な建物にしてから、他の改修・再生、専有部分のリノベをと考えます。でも、管理組合の心理としては、他の工事が何とか一段落して、専有部分のリノベの事例も出て、20年後、30年後もマンションが生き続けるイメージが持てて、初めて、耐震改修を前向きに考える気持ちになれるのかもしれません。リノベ住戸が増えて組合員が若返り、「このマンションが好き」「ここで未来も幸せに暮らしたい」と積極的に思う人がいることが、耐震改修の出発点かもしれません。
(マンション総合コンサルティング代表取締役)
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