不動産取引現場での意外な誤解 売買編113 改正された抵当権消滅請求制度とは?
住宅新報 2018年8月21日 号 8面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解
Q 今回は、従来の「滌除(てきじょ)」の制度が抵当権消滅請求の制度(民法379条)として、どのように改正されたのかを伺います。
A その最大の改正点は、抵当権者に対する「1割増し」での増価競売や買い受けの義務が撤廃されたということです。
したがって、改正後は抵当権者はその第三取得者から提示された額(取得代価相当額)が不足であれば、通常の競売手続で債権回収が図れるようになりました(民法383条1号・3号、384条1号、385条)。
Q ところで、そもそもこのような抵当権者による「1割増し」での競売や買い受けなどという理不尽とも思える制度がなぜ生まれたのでしょうか。
A それは、もともと「滌除」という制度が、抵当権者による抵当権の追及効、すなわち競売による価格の下落を阻止するための第三取得者に認められた法的対抗手段だったからです。それがいつの間にか、一部の買取り業者が抵当債権の損切りをさせるための手段として使うようになってしまいました。
Q その他にはどのような点が改正されたのですか。
A まず第1点は、この抵当権の消滅請求ができるのは、その抵当不動産の「所有権」を取得した者に限られ、従来認められていた地上権者や永小作権者が除外されたことです。そして第2点目は、その所有権を取得する際に停止条件を付けた場合にはその停止条件が成就するまでは消滅請求ができないとされ(民法381条)、譲渡担保権者も確定的に所有権を取得するまではできないとされています(判例)。
また、この抵当権の消滅請求ができる第三取得者は、その不動産について所有権の「本登記」をした者でなければならないと解されています。
Q ところで、本件の抵当権消滅請求制度は「第三取得者」の方からの請求で抵当権を消滅させるようになっていますが、逆の方法はあるのですか。
A あります。それは「代価弁済」という制度です(民法378条)。この制度は、抵当権者の方からの請求に基づいて、第三取得者が抵当不動産の代価(通常は時価相当額)を抵当権者に支払い消滅させる制度で、特に担保割れ物件の場合に有効な方法とされています。
渡邊不動産取引法実務研究所
代表 渡邊 秀男
























