紙上ブログ不動産屋の独り言456 賃貸現場の喜怒哀楽 坂口有吉 自分の現状を理解していない客(1) 審査落ちても、ない物ねだり
住宅新報 2018年6月12日 号 7面
そろそろ店を閉めて帰ろうか、と思っていた時間になって飛び込みで男性客がやってきた。年齢は32歳とのことで、見た目からはどこか異様な雰囲気が漂う。だが、お客さんではあるから、むげには扱えない。ほどなく彼女と暮らすことになるから2部屋必要だが、予算が極端に限られているという。
だが、もっと大きな問題があった。それは、連帯保証人が立てられないということ。更に最近、他の物件に申し込んで保証会社の審査に落ちて断られているということである。そうなると、別の保証会社に申し込んでも落とされる可能性があり、借りられる部屋はなくなってしまう。
助言届かず
「彼女と暮らすため」と言っていながら、1階の部屋でなければ嫌だと言う。理由は、先日他の不動産会社で2階の部屋の案内を受けていて、その際に下の住人から「うるさい」と文句を言われて、それがトラウマになっているからとのこと。
私が「そんなことは10年に1回あるかどうかですよ。彼女と暮らすなら、2階のほうがより安全だし、プライバシーも保てて、湿気も少ないから快適だと思いますよ」とアドバイスしたのだが、本人はもう完全に1階の部屋で凝り固まっている。逆に、2階の住人がうるさくても、自分が文句を言われるくらいなら自分たちが1階で暮らしたほうがいい、という考えだ。
条件は豊富
決めるのはお客さんなのだし、私も言うだけは言ったから後はお客さん自身の問題。だが、条件に合う1階の部屋はなかった。「条件」といっても、単に予算とか間取りだけではない。家主さんとの交渉事も入るから難しい。「先々はペットを飼いたい」とも言っていて、ハードルはどんどん上がる。それでいながら「自分が置かれている状況や現実」をまるで分かっていない。空き部屋はいっぱいあるはずだし、客が気に入りさえすればいつでも借りられる、とでも思っているようだ。不動産会社にとって、自分の場合ならどんな部屋しか借りられないのか、ということが分かっていない客ほど嫌なものはない。ない物ねだりをしていながらその自覚がないのだから。だが、訳あり専門業者の当社にピッタリの客とは言えるが。
(坂口有吉不動産・社長)
























