紙上ブログ不動産屋の独り言450 賃貸現場の喜怒哀楽 坂口有吉 うちは「訳あり専門」業者なのか 高難度の条件で依頼され
住宅新報 2018年5月1日 号 7面
店番をしていたらドアをノックする音がした。入ってくる気配がない。貼り紙で顔が隠れていて誰か分からなかったが、ある家主の友達だった。その家主は私にとっては思い出すのも嫌なため疎遠になっている。だが、どういう訳か、そのあたりの事情を知るこの友達とは今も付き合いが続いている。私がドアを開けて迎え入れると、「社長、私の友達が大変なことになっていて、助けてもらえないだろうか。こういうことを頼めるのは社長しかいないから」と、私の性格をよく知っていて持ち上げる。だが、話を聞いてみないことには力になれるか分からない。相当難しい条件での部屋探しの依頼ということくらいは予想がつく。
急ぎの事情で
「私の友達のご主人が先日亡くなった。今のアパートは3LDKだが、家賃が高いからもっと安いところに引っ越さなくてはならなくなって急いでいる」とのこと。急ぎの事情は、亡くなったご主人の親族との軋轢(あつれき)とのことで、ご本人(妻)は腎臓の病気で入退院を繰り返している。だが、個人経営である息子さんの会社の経理事務を任されていて年収が300万円ほどあるのと年金が入るので生活保護は受けられないし、本人もその気はなかった。たまたま入院する直前に時間があったので、本人と紹介者を部屋に案内すると、気に入って申し込みをしてくれた。同業者の管理物件で審査も通ったが、翌日には手術のため入院。といっても、体に入っている管を抜くだけなのですぐに退院してきた。あとは頃合いを見計らって管理会社に契約に行くだけだったが、紹介者が一人で店にやってきた。
状況が変わり
「退院後の状態が良くないらしくて仕事が続けられそうにない。どうしたらいいか」とのこと。「とりあえず入居してから生活保護の申請をしましょう。それなら医療費も出るし、逆に家主さんも(確実に家賃が入るから)安心してくれると思いますよ。後は私がなんとかします」と言うと安心して帰っていった。うちはやはり「訳あり専門不動産」だった。
審査は通っているから今の段階で「生活保護に変更になります」と言うと、話が振り出しに戻り管理会社にも迷惑を掛けることになる。ましてや保護申請を出してもいないのだから。
(坂口有吉不動産・社長)
























