長生き社会は認知症との共存社会。それは、マイナスな事じゃなく、コミュニティへの恩恵かもしれない…そう感じさせられたお話がありました。
60代の女性Aさんは夫と死別して、戸建てからマンションに移って一人暮らし。遠方に暮らす唯一の肉親である妹さんから地域包括支援センターに、「電話に出ないので安否を確認してもらえないか」…と電話が。地域包括支援センターの方が駆け付けるのですが、Aさんはインターホンに出ません。お巡りさんの声掛けでようやく玄関ドアが開きましたが、中はゴミ屋敷状態で、食べ物は腐り、コバエが…。専門家の診断を仰いだところ、若年性認知症と診断されました。
人と会話する自信がないので、電話にもインターホンにも出ず、ゴミの分別や収集日が分からないため、ゴミが捨てられないのです。で、妹さんは心配なので早く施設に入ってもらいたいと言うのですが、Aさんは、こんな状態でも、ここは安心だ…と今の暮らしが気に入っているのです。
それを聞いた管理組合の理事さんたちは、認知症サポーター養成講座を受けることから始めました。認知症を理解すると、Aさんが周りと付き合わないことも、ゴミを溜め込むことも、ルールが守れないことも、認知症ゆえのことだったんだと分かりました。そして、同じマンションの仲間なのだから、できるだけのことをしたいという気持ちが湧き上がり、自宅で暮らせる限界までAさんをサポートすることになりました。
住民は、介護保険を利用しながら暮らすAさんをお茶会に誘い、話をする機会をつくったところ、Aさんは喜んで参加し、自分の話もするようになりました。
一歩を踏み出すには
気が付くと、Aさんのためにと始めたお茶会は、これまであまり付き合いのないマンションで貴重な交流の場となり定着しました。回覧板やお裾分けも始まりました。
その後、症状が進んだAさんは、今はグループホームに入居しています。みんなは言います。Aさんのために何かをしたというより、Aさんのお蔭で、とても大切なご近所の結び付きをつくってもらったね…と。このつながりはAさんからの贈物です。ピンチはチャンス。誰かの役に立ちたいと思うとき、人は、大きな一歩を踏み出せるものですから。
(マンション総合コンサルティング代表取締役)
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